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「有望な選手」は、まだ力不足の意。
武藤嘉紀に伝えたい“急がば回れ”。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2015/04/20 10:30

「有望な選手」は、まだ力不足の意。武藤嘉紀に伝えたい“急がば回れ”。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

昨年9月、アギーレ監督に初招集されて以来、コンスタントに代表に呼ばれている武藤。ハリルジャパンで、まずは代表出場率75%を目指して欲しい。

武藤の将来にとってチェルシー移籍は「No」。

 そこで気になるのは、武藤本人の将来にとってチェルシーというクラブが本当に魅力的な移籍先なのかどうかということだ。ロンドンに住む日本人チェルシー・ファンという立場を離れて物を言えば、筆者の答えは「No」になる。

 武藤が今夏にチェルシー入りした場合、1軍での生存は困難を極める。その難易度は、過去2年間で代表戦75%以上出場という取得条件を満たしていないことから、「特例」扱いが必要となる労働許可証の取得と同等だと言ってもよい。

 チームの基本システムは4-2-3-1。ストライカー兼サイドアタッカーである武藤には、1トップよりも2列目アウトサイドでの競争に可能性がある。一般的に言って、フィジカル適応が絶対条件のセンターFWとは違い、持ち前の速さや左右両刀の足下といった長所を生かしやすいからだ。

アザールとウィリアン、オスカルやクアドラドがライバル。

 ところがチェルシーの同ポジションでは、エデン・アザールとウィリアンを相手にしなければならない。アザールは24歳で年齢的には近いが、現時点での実力差は歴然。この今季プレミアリーグ年間最優秀選手候補には、モウリーニョが「C・ロナウドとメッシに追いつける」とまで期待を寄せている。

 ウィリアンは4つ年上だが、ウィンガーとしては「走り盛り」の26歳。好みのハードワーカー兼テクニシャンに対し、指揮官の信頼は厚い。

 噂される新センターハーフ獲得が今夏に実現すれば、来季はセスク・ファブレガスを2列目に押し上げ、オスカルがトップ下からアウトサイドに回る機会も増えるだろう。23歳のオスカルは線の細い見た目も武藤に近いが、「ボール奪取は快感」と言うだけあって、タックルの巧さは2列目の守備力として右サイドで起用されることもあるラミレスを凌ぐ。バックアッパーには、400万ポンド(7億円強)と言われる武藤への提示額の6倍以上の移籍金で、フアン・クアドラドが今冬に加えられたばかりでもある。

【次ページ】 レンタル先での立ち位置も不安定なものに。

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