フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
「でも、ぼくは心が広くないので悔しい」
羽生結弦、二連覇逃すも堂々の銀。
posted2015/03/30 11:30
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph by
Asami Enomoto
「なんと言っていいのか、言葉がありません。まだ自分が勝ったことが信じられない。だってユヅルが負けるはずないと思っていましたから」
中国で初めて開催されたフィギュアスケート世界選手権。新世界チャンピオン、ハビエル・フェルナンデスは会見で開口一番にこう口にした。SP2位からの逆転により初めて手にした世界タイトル。もちろんスペイン出身の選手として、史上初である。
「セビリアの理髪師」は、1月にストックホルムで3度目の欧州選手権タイトルをとったプログラムで、あれからさらに細部を滑り込んできた。
出だしの4回転トウループは、ためらいを微塵も感じさせない素晴らしいジャンプだった。次の4回転サルコウで転倒するも、素早く持ち直して3アクセルを着氷。後半に4サルコウ+2トウループのコンビネーションを成功させた瞬間、今回はフェルナンデスがいくな、という予感が確信に変わった。
フリーは181.16で2位という数字。画面が切り替わり、総合1位と出た。
「他の選手を見ていなかったので、フリー1位はユヅルだろうと思っていた。自分は総合2位という結果を受け入れる気持ちになっていたので、本当に唖然としたんです」
フェルナンデスは、そう語る。
優勝会見では、地元・中国メディアから「日本のスケーターと付き合っているのは本当か」というプライバシーに関する質問も飛び出した。このところメディアで報道されていた安藤美姫のことだろう。フェルナンデスはためらいも見せずに「本当です」と答え、「多くの人がぼくを支えてくれている。彼女もその1人」と、爽やかな笑顔のままあっさり締めくくった。
日本人として初めての二連覇はならずとも……。
羽生結弦は、SP1位という立場から挑んだフリーだった。
「オペラ座の怪人」のメロディにあわせて演技を開始したが、練習では好調そうに見えた4サルコウが、2回転に。続いた4回転トウループで転倒した。
「サルコウは公式練習から入って(成功して)いた。来る前から曲をかけての練習でしっかり入っていて、あまり心配していなかったので(失敗は)ちょっとびっくりした。トウループの前に、ふとしたところで『あっ』という瞬間があった。集中力がきれた瞬間だったと思います」
だがそこからは、普段の羽生に戻った。3フリップ、3アクセル+3トウループなど8回の3回転を成功させて、最後まで力強く滑りきった。
フリー175.88、総合271.08。
期待されていた日本人として初の二連覇はならなかったものの、2位に踏みとどまった。