フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
「でも、ぼくは心が広くないので悔しい」
羽生結弦、二連覇逃すも堂々の銀。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byAsami Enomoto
posted2015/03/30 11:30
羽生はフェルナンデスについて「ぼくにとってお兄さんみたいな存在」とコメントした。オーサーコーチは「あと2週間、練習が足りなかった。でも誇りに思うよ」と羽生をかばった。
織田が2枠に、高橋が3枠に増やしてきた出場枠。
最終順位が何位になるのかは、全員が終わるまでわからなかった。
「世界選手権の枠取りは織田(信成)選手が(2枠に)増やしてくれて、次の年に高橋(大輔)選手と織田選手が3枠に増やしてくれて、そのあとずっと守ってきた。この伝統は引き継いで次に渡していかないといけないもの」
だが無情にも、最終的に羽生の2位、小塚の12位を足して合計14位と、惜しいところで3枠を逃した。来季の世界選手権の男子は2007年以来の2枠となる。
「来季はどうなるかわからないけれど、このままで自分のスケートを終わらせたくないという気持ちはある」と、小塚は言葉を結んだ。
次に滑走した無良崇人は、「オペラ座の怪人」のフリー。
出だしの4回転トウループを成功させ、次に予定していた二度目の4回転は3ルッツ+3トウループにした。だが3アクセルは、SPと同じようにパンクして1回転半に。それでも後半の3アクセル+2トウループは「次のアクセルを降りられなかったらもう終わりだと思って」成功させた。
結果はフリー146.81、総合211.74で16位だった。
4回転を飛ばずとも――個性豊かなトップ選手たち。
この大会では、4回転を跳ばない選手2人が上位6人に入ったことも興味深い。
音楽に合わせた表現に抜きん出ていて、まるでモダンバレエの舞台を見ているかのようなフリーを滑った米国のジェイソン・ブラウンが、総合248.29で総合4位。5コンポーネンツでは彼に10点満点のトランジション(つなぎ)を与えたジャッジも1人いた。
「子供の頃から、人前で演じるということが大好きだった。トランジションで10点をもらったことは夢のよう」とブラウンは喜びを口にした。
またかねてから個性的なプログラムで注目されていたウズベキスタンのミーシャ・ジーは会心の演技で6位に入った。
いずれも4回転を含まないプログラムだが、本人の個性を最大限に生かして戦った選手たちである。
羽生の後輩で、ブライアン・オーサーの生徒でまだ16歳のナム・グエン(カナダ)は4サルコウも含むすべてのジャンプを成功させ総合5位と健闘。メダル候補でもあったロシアのマキシム・コフトゥンはSPで失敗して16位というスタートから、フリーで総合7位まで追い上げた。
タイトルと3枠を失ったことで、新たな試練を与えられた日本男子。ここからどのように再生を図っていくのか、来季にかかる期待は大きい。