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英才教育の父に「彼は素晴らしい父親。ただ…」アリサ・リュウの“物語”は母国でどう受け止められた? 使用楽曲が再ブーム、地元アイス店は「生涯無料」に
posted2026/02/27 17:05
ミラノ五輪で2つの金メダルを獲得した米国のアリサ・リュウ。その波乱万丈な競技人生は母国でどのように受け止められたのだろうか?
text by

一野洋Hiroshi Ichino
photograph by
Asami Enomoto / JMPA
日本フィギュアスケート界が大いに沸いたミラノ・コルティナ五輪。三浦璃来と木原龍一の「りくりゅう」ペアが歓喜し、男女シングルでも日本勢が銀と銅を獲得。リンクは祝祭に包まれた。
歓声と涙、そして安堵が交錯する氷上で、それぞれの物語が完結していく。その中心で、ひときわ自由に、そして軽やかに舞ったのが20歳のアリサ・リュウだった。
女子シングルと団体で金メダル。米国女子が五輪個人で金メダルを手にするのは2002年以来だと、多くの米メディアがその快挙を伝えた。だがアメリカで語られたのは、単なる“歴史的勝利”ではない。そこには、16歳で競技を去った少女の帰還、そして父との距離をめぐる物語があった。
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『ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)』電子版は彼女を「最も予想外の五輪チャンピオン」と表現した。史上最年少の13歳で全米女王。トリプルアクセル、4回転。小さな身体で大技を跳ぶ神童。あまりに小柄で、表彰台に上がる際にライバルに手を引かれたこともあった。
当時の彼女は、未来を約束された存在だった。ジャンプの高さも回転速度も、身体能力の伸び代も、すべてが“計画通り”に見えた。
16歳で一度は引退…燃え尽き症候群とも?
だが、神童という称号は祝福であると同時に重荷でもある。北京五輪6位(※カミラ・ワリエワ失格後)、同年の世界選手権は銅メダル。結果は決して失敗ではない。それでも彼女は16歳で引退の道を選んだ。
WSJはその背景を、燃え尽き症候群の兆候とともに描いた。競技が人生のすべてを占め、管理と期待の中で成長してきた少女の消耗。アメリカでこの引退は「挫折」ではなく、「限界宣言」として受け止められた。競技に勝つことよりも、自分を守る選択だった。

