セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
パルマの債務が8年で200億円急増。
映画顔負けの“国際超巨大詐欺”か。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2015/03/05 10:30
パルマ市長との会談を終え、メディアに囲まれるマネンティ。彼は果たして何者なのか、そしてその後ろにいる黒幕とは。
今季4人目の会長は、謎の企業の経営者。
選手たちは、グラウンドの内外で苦境に喘いでいた。
給料の支払いが昨年7月分からストップし、それに伴う罰則処分として、12月初旬に勝ち点マイナス1のペナルティがチームへ科された。前半戦終了時点での勝ち点9は、'06-'07年シーズンにアスコリが記録したリーグワースト記録に並ぶものだ。
チーム一の高給取りだったFWカッサーノが、給料未払いに悩める同僚たちを代弁して経営陣を批判すると、クラブはエースとの契約を解除した。クラブの方針に疑問を持ったDFフェリペもカッサーノに追随。上層部に対するサポーターの猛抗議は激しさを増した。
クラブの窮状がもはや隠せないところまできていた2月6日、パルマFCの経営権を石油王タチから買い取った人物が現れた。
ふって湧いたように現れたジャンピエトロ・マネンティと名乗る中年のイタリア人実業家は、今季4人目となるクラブ会長の座に就いた。
彼の肩書は、スロベニアとの国境近くにある小さな町ノヴァ・ゴリツァに本拠を持つ「マピ・グループ」の経営者というものだが、ロシアの巨大エネルギー企業「ガスプロム」との繋がりがあるらしいということ以外、その実態は誰にもわからなかった。
「明日には口座に振り込まれる」と毎日繰り返す。
新会長は「私には国外資本を使ってクラブを救う算段がある。信じてほしい」と豪語したが、資金の出所をはっきりさせず、「せめて取引しているメインバンクの名前だけでも」と質問した地元紙記者へ逆に食ってかかるマネンティを見て、パルマ市民は大きな疑念を抱いた。
見た目と社会的地位がほぼ直結するイタリアにあって、無精髭と色褪せたジャケットで毎日同じ姿の新会長は、およそ資産家らしからぬ出で立ちだと訝しがられた。
会計監査によって、昨年6月末時点でのクラブの純負債額が、9650万ユーロ(約129億円超)に達していることを知った選手たちの不安と動揺は、新会長の言動で収まるどころか、強まるばかりだった。
彼らの代表である主将ルカレッリは、2月の給料日にあたる16日を期限として法的手段に訴えることをクラブへ通告したが、「明日には口座に振り込まれる」と毎日のように繰り返したマネンティ会長の言葉は、その度に選手たちとクラブ職員たちを裏切った。