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パルマの債務が8年で200億円急増。
映画顔負けの“国際超巨大詐欺”か。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2015/03/05 10:30
パルマ市長との会談を終え、メディアに囲まれるマネンティ。彼は果たして何者なのか、そしてその後ろにいる黒幕とは。
「私はこのチームを“タイタニック”だと思っていた」
ちょうど5年ほど前のこの時期、コッレッキオ練習場を取材したことを思い出す。
トップチームから育成年代まで一堂に揃うトレーニング施設は、濃い霧に包まれて独特の雰囲気があった。今、プリマヴェーラの監督をしているクレスポがまだ現役だった。
話を聞いたチームマネージャーのアレッサンドロ・メッリは「ペルージャではヒデ(=中田英寿)といっしょだった。本当に楽しかった」と懐かしみながら、自身が育成部門から巣立ち、ストライカーとしての全盛期を過ごしたパルマFCというクラブを誇りにしていた。
メッリは先月22日、タルディーニでの1000人デモにも参加した。
「昨季は6位にこそ入れたけれど、私はこのチームのことを“タイタニック”だと思っていた。誰もがファーストクラスにいると信じ込んでいただけで、本当は水面下では崩壊が始まっていた。沈没するには、EL予選出場権取り消しという小さな岩礁だけで十分だった」
チームマネージャーは、それでも、給料未払いに至った原因に首をかしげる。
「不可解なのは、なぜこんなに極端な資金不足に追い込まれたのか、ということだ。我々は、移籍市場で無茶な商売をしたことは決してないんだ」
クラブには、パルマラットの破産から一度立て直した経験があるだけに、悔恨も余計募るのだろう。
練習場からは、ベンチもロッカーも何もかもなくなった。栄光のクラブは、最後のタイトルになった'02年のコッパ・イタリアから、随分と遠いところまで来てしまった。
司法の手が入れば、全容解明は数年先になるだろう。その頃には、パルマFCに今在籍している選手のうち、何人かは引退しているかもしれない。ただ、彼らにとっては、目の前にあるはずの次の試合ですら、いつになるのか定かではない。
パルマの春は遠い。少なくとも、3月19日までは訪れない。