セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
パルマの債務が8年で200億円急増。
映画顔負けの“国際超巨大詐欺”か。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2015/03/05 10:30
パルマ市長との会談を終え、メディアに囲まれるマネンティ。彼は果たして何者なのか、そしてその後ろにいる黒幕とは。
元金融コンサルタントの市長は、生粋のパルマっ子。
怪しげな外国資本に頼らず、イタリア司法と行政、地元産業界の支援によるクラブ存続を、というスタンスの市長は1月の段階から首都ローマへ出向き、協会やリーグに窮状を直接説き、救済策を探っていた。問題が表面化すると、市から70万ユーロの緊急支援を行なう略式命令を出した。
その後も地元の経済界を足しげく回り、市長としての本業は大丈夫なのかと外野が心配するほど、クラブの誰よりも次期パトロン探しへ積極的に動いている。
パルマFCが完全消滅ともなれば、地元経済界にも少なくない打撃が及ぶ。穿った見方をすれば、次回市長選に向けた票固めと思えなくもないが、生粋のパルマっ子である市長の前職は銀行の金融コンサルタント。「銀行が」「手続きが」と、のらりくらり言い訳を繰り返すマネンティ会長は、資産運用の元プロの目から見て、取引相手としてありえないほど不誠実なのだろう。
「パルマFCが彼の下にある限り、タルディーニは閉鎖」
2月27日、ようやくマネンティ会長をパルマ市庁舎へ呼び出すことに成功した市長は、1時間以上にわたった面談で、クラブの長としての責任を追及し、速やかな会社更生手続きを強く促した。会長との“対決”を終えたピッツァロッティ市長は、厳しい言葉を地元メディアへ投げかけた。
「マネンティ氏は、信用するに値しない人物だ。彼は今日も『金は明日届く。明日』と言い続けた。しかし『では、どこから?』という私の問いには答えない。パルマ市として、彼とこれ以上交渉のテーブルにつく意味はない。残念だが、パルマFCが彼の下にある限り、タルディーニ(パルマのホームスタジアム)は閉鎖する」
マネンティ会長が市庁舎を出ると、来たときにも待ち構えていた200人以上のサポーターと一般市民が、彼を罵倒し、唾の雨を降らせた。
「出て行け、泥棒!」「ペテン師野郎め!」
彼らは、町のクラブを食い物にしようとしている卑怯者を、彼らなりの方法で弾劾したのだった。