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パルマの債務が8年で200億円急増。
映画顔負けの“国際超巨大詐欺”か。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2015/03/05 10:30
パルマ市長との会談を終え、メディアに囲まれるマネンティ。彼は果たして何者なのか、そしてその後ろにいる黒幕とは。
2006年に1600万だった負債は、1億9700万ユーロに。
パルマ市民の脳裏には、2003年末に発覚した地元の巨大食品企業パルマラットの巨額詐欺事件がこびりついている。当時、市が背負った有形無形のダメージはあまりに大きかった。以来、ありもしない出資を謳う経営者に、強い嫌悪と猜疑心を抱くのも当然だろう。欧州カップ戦でのタイトルを争った栄華の日々から一転、パルマFCは地道に再建の道を歩んできたのだ。
元会長ギラルディが会長職に就く前の2006年、パルマFCの負債は、税金を含めて1600万ユーロに留まっていた。それが'13-'14シーズンが終わったとき、負債額は、税込1億9700万ユーロにまで膨れ上がっていた。完全に異常だ。
その間、パルマFCはFWクリスティアーノ・ロナウドを買ったわけでもないし、無茶な不動産投機に手を出して失敗したわけでもない。
移籍市場の取引で多少赤字になることはあっても、同時期に累計2億2000万ユーロに上るTV放映権料がリーグから分配されていた上、入場料収入やマーチャンダイジング収入もクラブにはあった。選手の給料未払いやスタジアムの電気代が払えない事態など、起こるはずがなかった。
パルマFCにあったはずの大量の金は、どこかへ消えてしまったのだ。
スロベニアのクラブとの間で結ばれた不可解な契約。
会長マネンティは、2月初頭の就任後、複数の銀行で国外送金を試み、そのたびに失敗したと強弁している。しかし、業務を依頼された銀行は、いずれも彼の指定する口座が空っぽだったことを確認しただけだった。実際に存在しない金は送金されようがない。はっきりしているのは、マネンティは茶番を繰り返しているということだ。
一体、何のために?
マネンティが経営していたという「マピ」社があったのは、ノヴァ・ゴリツァというスロベニアの町だ。もともと営業実態があったかどうかすらもわからない同社の経済活動は、昨年2月19日限りで停止している。営業を始めたとされるのは、2013年4月10日だ。
人口3万人ちょっとのノヴァ・ゴリツァに、スロベニアでは割と名の知れた「NDゴリツァ」というサッカークラブがある。
ギラルディがまだ会長職にあった2013年5月、パルマFCはNDゴリツァと、指導者や選手を送り込むパートナー契約を結んだ。イタリア人監督の給料を、送り込む側のパルマFCが払う奇妙な契約だった。