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錦織圭、歴代のラケットを徹底検証!
プロ転向から2015年全豪OPまで。
text by
河崎三行Sangyo Kawasaki
photograph byAction Images/AFLO(L),Tennis Classic Break(R)
posted2015/01/20 10:30
ブリスベン国際での25歳の錦織と、ウイルソンと初めて契約した11歳の時の錦織。
連戦を乗り越えるために生まれた最新モデル。
・使用時の錦織の年齢 25歳~(2015年~)
・現時点での主な戦績 ブリスベン国際 単・ベスト4、複・準優勝
・素材 ハイパフォーマンス・カーボン・ファイバー+バサルト・ファイバー+カロファイト・ブラック+グラファイト
・全長 27.25インチ 重量 309g平均(一般市販品の場合)
・フェイス面積 95平方インチ
・定価39000円(2月下旬発売予定)
●BURN 95(バーン95)
今季から使用している最新モデル、「BURN 95」に錦織が求めたものはずばり、打球スピード。
それは昨年5月のマドリッド・マスターズで決勝に進出しながら、途中棄権せざるを得なかったことがきっかけになっている。過去一度も勝ったことのなかった元王者ナダルを向こうに回し、第1セットを先取。続く第2セットも互角以上に試合を進めていたにもかかわらず、途中で股関節を痛めてしまい、第3セット序盤の時点で試合続行不可能となってしまった。
昨年の彼はシーズン初頭から躍進を続けた。全豪オープン16強入りを皮切りに、2月には全米国際インドアで優勝、3月にはマイアミ・マスターズでフェデラーを破って準決勝進出、さらに4月のバルセロナ・オープンでも優勝していた。そうした連戦で蓄積された疲労と、様々なショットを頭脳的に使いながら長いラリーで相手からポイントを奪う錦織のプレースタイルとが重なり、とうとうマドリッドで体が悲鳴を上げてしまったのだ。
この出来事が教訓となって、錦織はサービスエースや、より短いラリーからのウイナーを増やす攻撃的なテニス(それは決して、どのポイントも攻め急ぐという意味ではない)の必要性を痛感し、もっとボールスピードを上げねばという結論にたどり着いたのである。
体力やメンタルのスタミナを効率的に使えれば、大会の初戦から決勝まで、あるいは過酷な長丁場のシーズン全体を通して、安定した高いパフォーマンスを発揮できる。つまり2015年の錦織はトッププロとしてはっきりと「常勝」を意識し、自身に課したタスクを実現させるための装備をウイルソンに求めたというわけだ。
「また似たような話になりますが、ウイルソン側の予定としては2015年も前モデルの『STeam 95』を継続使用してもらう予定だったんです(笑)。でも圭君から明確な要望が出た以上、我々も『だったら作ろう』と。ボールスピードを増すこと以外、フィーリングについては変えないでほしいということでしたので、基本的な構造は『STeam 95』のまま、フェイス面の内側にハイパフォーマンス・カーボン・ファイバーという、剛性の高い炭素繊維を搭載しています。インパクト時に起こる、フェイス面フレームの内側へのねじれが抑えられるのでパワーロスが減り、高い反発力を得られるのです」(道場氏)
「BURN 95」では平均8%も球速がアップ!
本社ラボでのマシンテストでは、平均8%の球速アップが認められている。
「今回は、それまでのモデルに本社ラボでストックされていた素材と理論を上乗せする手法であることと、我々日本支社が圭君の求めるラケットのイメージを最初から明確に描けていたことで、5カ月という異例の短期間で開発することができました。通常だと、1年程度かかるものなのですが」(道場氏)
新ラケットの効果は、ブリスベン国際のシングルス初戦でさっそく表れた。いずれもフォールトだったとはいえ、自己最速である時速200キロのサーブを2本記録したのだ。そして最終的にシングルス4強、ダブルス準優勝という成績で今季初大会を終えた。