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錦織圭、歴代のラケットを徹底検証!
プロ転向から2015年全豪OPまで。
text by
河崎三行Sangyo Kawasaki
photograph byAction Images/AFLO(L),Tennis Classic Break(R)
posted2015/01/20 10:30
ブリスベン国際での25歳の錦織と、ウイルソンと初めて契約した11歳の時の錦織。
日本市場だけで発売される特別なモデル。
余談ながらBURNシリーズには、他にフェイス面積が100平方インチの姉妹モデル(BURN 100)がいくつかあり、そちらはワールドワイドで販売される。錦織使用モデルは日本市場のみで限定販売されることとなったはずなのに、なぜそのようなセールス展開となったのだろうか。
「先ほどもお伝えしたように、『BURN 95』の開発は我々の想定していなかった形で始まりました。その時点で『BURN 100』シリーズは販売前のプロトタイプが出来上がっていて、ハイパフォーマンス・カーボン・ファイバーが搭載されていたんです。我々は、このテクノロジーを『STeam 95』に移植すれば圭君の求めるラケットを作れると考え、予想通り彼から即座にOKが出たので、製品化することになりました。ですがそのラケットは当然、元の『STeam 95』と同じキャラクターではありません。そこで2015年から『STeam』シリーズは廃版にし、出来上がった錦織モデルの新ラケットを『BURN』シリーズへ組み込むことにしたのです。ハイパフォーマンス・カーボン・ファイバーのテクノロジーが搭載されていることは共通していますからね。だから同じ『BURN』シリーズでも、『95』と『100』はフェイス面積が違うだけでなく、フレームの基本構造や形状、特性がそもそもまったくの別物なんです。そして『95』が販売されるのはここ数年の慣例通り、日本市場だけです」(道場氏)
世界規模で展開されるビジネスには、いろいろとフクザツな事情があるのだ。
もっとも、『BURN』シリーズに共通するカラーリングについては、逆に日本支社の意向が強く働いている。
「『BURN』シリーズのベースカラーを黒にすることは、プロトタイプの段階で決定していたのですが、差し色を何にするかまでは決まっていませんでした。そこで、新しい錦織モデルが『BURN』シリーズに組み込まれることになった時点で、日本支社からアメリカの本社に『差し色は、ぜひオレンジにしてほしい』と訴え、その配色がワールドワイドで採用されたんです。オレンジは圭君の好きな色ですからね。彼の躍進や日本での認知度、それに伴う大きなビジネスチャンスは本社もきちんと認識しているので、今まで以上に彼を大切にしようとしているし、我々の意向も尊重してくれるというわけです」(道場氏)
空前の売れ行きを見せる「BURN 95」。
今やテニス界はおろか、日本のスポーツ界を代表するアイコンの一人となった錦織の人気を反映してか、まだ発売前にもかかわらず「BURN 95」のセールスは絶好調だ。
「私が入社してからの18年間でかつて経験したことのない、大量の受注が入っています。昨年の全米オープン準V以降の盛り上がりを踏まえ、例年の倍の本数を確保していたのですが、それでもまったく足りません。今、お店で注文していただいても、お渡しは5月か6月になってしまう状況です。『BURN 95』のために、発表したけれども作るのを一時中断している2015年モデルもあるんですが、それでもまったく生産が追い付かないんです」(道場氏)