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輝きを失った香川真司、葛藤を語る。
「前のイメージを忘れる必要がある」
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2014/12/10 12:30
ドルトムントにブンデスリーガ優勝をもたらした香川真司の復活は、彼を歓迎したファンたちへの恩返しでもある。
同じ時期にやってきたインモービレへの共感。
香川が、現在の状況に危機感を抱かないはずがない。ホッフェンハイム戦でスタメン落ちして、代わりに入ったギュンドガンが素晴らしいプレーを見せた意味も決して小さくはない。
香川は語る。
「やっぱり、目に見える結果が欲しい。何事も信頼を得るには、結果を奪いとること。やはり、『自分で切り開く』しかないですし。チロ(インモービレ)が今日は点を獲ったようにね」
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インモービレはシーズン前にトリノから推定約27億円の移籍金で加入した。しかしアンデルレヒト戦の前までの5試合では、3試合に途中出場したのみで出場時間はわずかに30分。4日前のハーフタイムにも、この日のウォーミングアップでも、香川はインモービレとコンビでパス交換をしていた。セリエA得点王の看板をひっさげて意気揚々とやってきながら、不遇をかこつストライカーの気持ちの揺れに触れる機会が香川にはあったのだ。
「あまり試合にからめていないのに、彼は結果を出しました。彼の貪欲さというのをすごく感じた試合ですし、それは自分にも必要です」
ムヒタリアンに対しては、称賛を口にしたクロップ。
サイドのMFを務めるムヒタリアンも、シュートを何本も打ちながらゴールを決められず、香川同様に批判を受けている。この試合でも6本のシュートを放ちながら、またしてもゴールは決められなかった。それでも、試合後にはクロップ監督はムヒタリアンについて称賛の言葉を口にしている。
「ムヒタリアンは素晴らしいプレーをして、ゴールを決めるためのポジションに入っていた。今は決められていないが、それは多くの選手が通る道だ。彼にもゴールを決める日がまた来るはずだよ」
そして、何よりムヒタリアンはスタメンで起用され続けている。もちろん、トップ下とサイドのMFでは役割が同じではない。それでも、クロップ監督が前線の選手に求めていることが、独力で状況を打開して、シュートはもちろん決定的なチャンスを作り出すことなのに変わりは無い。
サヒンやクバが復帰して、1年以上戦列を離れていたギュンドガンもCLで準優勝した'12-'13シーズンに放ったような輝きを取り戻しつつある。それならばカガワも、とファンが期待をしたり、以前のような活躍を見せられない姿に不満を持つのも仕方がないのかもしれない。