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JC制覇エピファネイア、世界最強へ。
掛かっても突き抜けた「圧勝」の裏側。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byYuji Takahashi
posted2014/12/01 11:15
ジャパンカップを圧勝したエピファネイア。鞍上のスミヨンは凱旋門賞への適性を問われると「こんな馬に乗れたらいいなと思います」とコメントした。
2番人気ハープスターをアクシデントが襲う。
対照的に、アクシデントに巻き込まれた有力馬もいた。2番人気の3歳牝馬、ハープスターである。
3、4コーナー中間で故障を発生して下がってきた外国馬のトレーディングレザーに接触し、つまずいてしまったのだ。
「目の前だったので、避けるのが間に合わなかった。それなのに、よくここまで来てくれたと思う。何より、馬が無事でいてくれるといいのですが」と鞍上の川田将雅は言う。
実は、これも勝負のアヤと言うべきなのか、馬1頭ぶんの位置取りの差が明暗を分けた。
故障したトレーディングレザーの真後ろには横山典弘のワンアンドオンリーがいて、川田のハープスターはその直後につけていた。
トレーディングが骨折する直前、動きに異変を感じた横山はすぐさま手綱を操作してワンアンドオンリーを外に出し、接触することなくスパートをかけた。このように、周囲の騎手が、故障しそうな気配を察知して衝突を回避するケースはときおり見受けられる。
だが川田からは、前にワンアンドオンリーがいたため死角になっていた。ワンアンドオンリーがスッと外に進路を変えた次の瞬間、急ブレーキをかけたトレーディングが目の前にいた。これでは避けようがない。
4コーナーでも、活力を失っていなかったエピファネイア。
4コーナーに差しかかっても、エピファネイアは凄まじい勢いで前に行こうとする活力を失っていなかった。
「格が高いレースだと、どこかでひと息つかなければ最後までもたないのに、4コーナーまでマイラーのような勢いで走っていた。直線に入るとき、少し抑えて息を入れようと思ったのだが、ここがスタートというほどの勢いがあった」
そう話すスミヨンがラスト400m地点でゴーサインを出すと、エピファネイアは溜め込んでいたエネルギーを一気に爆発させた。
見る見る後続を引き離し、2着のジャスタウェイに4馬身もの差をつけフィニッシュ。菊花賞以来ほぼ1年ぶりの勝利を挙げた。