セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
復活の長友佑都、危機感の本田圭佑。
ミラノダービーで交錯した2人の現在。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2014/11/25 11:30
ミラノダービーで初めて顔を合わせた、長友佑都と本田圭佑。不調から立ち直った長友と、好調を取り戻したい本田、2人にとってこの試合はどんな転機となるのだろうか。
インテル復帰のマンチーニは長友を重用するか。
そして性急に上位への復帰を目論む新監督は、長友にもよりハイレベルのプレーを要求している。
「守備の一対一はもちろん、ラインを高くとって攻撃的に守備をしろ、と。前でいい守備ができれば、もっといい攻撃ができるんじゃないかと思う」
1月の移籍市場では、指揮官の古巣マンCからSBコラロフが獲得される可能性もある。クラブでも古株となる長友だが、新戦術と新ポジションに手応えを得たとはいえ、煌びやかな現役時代と獲得タイトル歴を誇るマンチーニの信頼を勝ち取るのは容易なことではない。
長友は、精神的葛藤を乗り越えた勢いで、正念場の12月に挑む。
「監督はいつも『ケイ、ゴールしろ!』と言ってくる」
一方、本田が抱く危機感は強まるばかりだ。
ダービーでのドローによって、ミランのここ5戦の戦績は1敗4分けとなった。攻守両面に問題を抱え、チームが停滞期にあることは否めない。
この日、リーグ戦12節目にして本田は初めて先発の座を外れた。
日本でホンジュラスとオーストラリア相手に2試合をフルに戦い、ミラノに戻ったのが試合からわずか4日前。時差ボケや蓄積された疲労が完全に抜けるはずもなく、チーム得点王の体調を憂慮したインザーギ監督が、本田へ今季初めてベンチスタートを命じたのだ。
FWトーレスに代えて、本田が投入されたのは同点とされた後の73分。
「監督はいつも『ケイ、ゴールしろ!』と言ってくる。それに応えたいと思って、試合に臨んでいる」
77分、右サイド中盤でボールを受けた本田は、ドリブルでインテルPA右に持ち込んだ。低空の左足シュートを放ち、GKハンダノビッチを慌てさせたのが見せ場だった。8万人が息を飲み、ミラニスタは拍手を送った。
試合後、シュートの場面を振り返った本田は「結果を出さないと。前の選手は“惜しい”では意味がない」と悔しさを見せた。
中盤のエッシェン、ムンタリのガーナコンビは運動量が極端に少なく、右サイドから攻め込む本田へのサポートは皆無だった。コンディションが理由とはいえ、初の先発落ちに危機感を強めたのだろう。本田は「結果」という言葉に、力を込めていた。