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ダノンシャークが競り勝ったマイルCS。
淀の直線に見た「120%」の叩き合い。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byYuji Takahashi
posted2014/11/25 11:10
マイルCSには3年連続の出走だったダノンシャーク(左)。8番人気と決して戦前の評価は高くなかったが、鋭い末脚で栄冠をつかんだ。
追撃態勢に入ったトーセンラーに何が?
昨年同様、道中は後方に控えた武豊のトーセンラーは、3コーナーの坂を下りながら進出。直線入口で外に持ち出し、追撃態勢に入った。
「去年と同じようなレースができ、4コーナーでも上手く馬群をさばくことができた。よし、と思ったのですが、ゴーサインを出してからの反応が去年ほどではなかった」
と武が言うように、その末脚には、前をまとめて差し切った昨年のような鋭さはなかった。
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ラスト200m地点の手前で抜け出したフィエロの直後に、溜め込んだエネルギーを爆発させる機を虎視眈々と狙う鹿毛馬がいた。テン乗りの岩田康誠が操るダノンシャークだ。
「フィエロが前にいて、道をつくってくれると思っていた。素晴らしい脚を持っているので、あとはどこで生かすかだけだった」
そう話す岩田は、フィエロの内にダノンシャークを誘導した。びっしり馬体を併せた叩き合いが100m以上もつづく。内のダノンシャークが、ジリジリと、だが確実に前に出て、外のフィエロを鼻差だけ競り落としたところがゴールだった。
コースレコードにコンマ1秒の高速決着。
管理する大久保調教師は、「満点です」と笑顔を見せた。
「ここ最近負けるパターンがハッキリしていたので、岩田君には『前にだけは行かないでくれ』と言いました。昨日、夢で見たそのままの結果になってくれました」
勝ちタイムは、コースレコードにコンマ1秒及ばないだけの1分31秒5。フィエロとの差は僅かに5センチだった。
ダノンシャークは重賞3勝目にして、初のGIタイトルを獲得した。
前年、この馬が1番人気になって3着に敗れたときの鞍上は、今年フィエロで惜敗した福永だった。福永は、去年のレース後「ポジションも、前があくタイミングも完璧。結果だけが完璧ではなかった」とコメントしていたが、今年も「結果だけが伴わなかった」と悔しそうだった。