プロ野球亭日乗BACK NUMBER
大谷翔平の獲得合戦は始まっている!
速く、そして動くストレートの威力。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKyodo News
posted2014/11/14 10:40
日米野球第1戦に登板した大谷翔平。シーズン中には日本人史上最速の162kmを記録し、11勝4敗と二桁勝利を達成。まだ2年目、大谷はどこまで成長していくのだろう。
速いだけでは、彼らを押し込むことはできない。
もちろん真っ直ぐの速さは大谷の武器であり、その点はメジャーリーガーたちも大いに認める部分である。
ただ、実際に対戦したゾブリストは速さを認めた上で、しかし「それはスペシャルではない」としてこんなことを言っている。
「彼はとても速いし素晴らしいアームの持ち主だ。ただ、僕らはいつも速いボールを見ているからね。初めて見るボールというわけじゃないよ」
そうなのだ。
確かに速いが、この程度のスピードはアメリカではマイナーでもいる。ただ速いだけでは、そうは簡単に彼らを押し込むことはできないはずなのだ。しかし、それでも大谷は3人の打者を確実に打席で詰まらせていた。
その理由のヒントになりそうなのがエスコバーのこんな言葉ではなかっただろうか。
「全部90マイルを超えていたね。それとボールがよく動いていた。彼ならメジャーでも活躍すると思うよ」
本人はボールが合わずに「(真っ直ぐが)沈んでいた」と不満を口にしている。それが「自分の投球ではなかった」という言葉に結びついているのだろう。
ただメジャーの選手たちにとっては、それなりのスピードがあって、しかも動くことこそ、大谷という投手をやっかいにさせた一番の原因だったのである。
鹿取コーチ「いい具合に動いていたね」
その点を認めるのは、侍ジャパンの投手陣を預かる鹿取義隆投手コーチだった。
大谷が打者をことごとく詰まらせた原因は何だったのか? ボールの出所が見にくいとか、スピード以外に何か秘密があったのではないか? この質問に鹿取コーチはひとこと、こう答えている。
「いい具合に動いていたね」
本人は不満を口にしたが、そのボールの動きに意図した部分がなければ、意思が通ったボールでなければ、これほどまでに相手をねじ伏せることは不可能である。ただ速いだけではなく、手元で動く。どうしてもスピードガンの表示ばかりに目が行きがちだが、この右腕の真っ直ぐの威力は、数字以上にそこにある。
この日対戦したメジャーリーガーたちは、そのことをしっかりと打席で感じ取っていたわけである。