プロ野球亭日乗BACK NUMBER
大谷翔平の獲得合戦は始まっている!
速く、そして動くストレートの威力。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKyodo News
posted2014/11/14 10:40
日米野球第1戦に登板した大谷翔平。シーズン中には日本人史上最速の162kmを記録し、11勝4敗と二桁勝利を達成。まだ2年目、大谷はどこまで成長していくのだろう。
150km台後半のストレートに、球場からため息。
侍ジャパンが2点をリードした8回。京セラドームに「ピッチャー、大谷」の場内放送が流れると、スタンドからは大歓声が沸き起こった。
「マウンドに行くまでは緊張しましたけど、対戦する中ではそんなに(緊張感は)なかったかなと思います」
最初の打者のアルシデス・エスコバー内野手には初球に152kmのストレートでストライクをとると、155km、153kmとストレートを続けて詰まった右飛。2人目のデクスター・ファウラー外野手にはいきなり157kmとスピードアップした真っ直ぐから入り、3球目にスライダーと5球目にスプリットを挟んで、他の4球はすべて150km後半のストレート。最後は156kmの内角真っ直ぐでこれまた詰まらせて左翼へのフライに打ち取った。
そして最後の打者はベン・ゾブリスト内野手。初球にいきなり内角低めに外れたが159kmが出て、球場は大きなため息に包まれた。そして2球目も158kmで、これまた「ホーッ!」というなんとも言い難いため息がドームを包み、最後もインコースへの158km。これにゾブリストも詰まって一塁へのゴロに倒れた。
「的は大きくて投げやすかったですけど、自分の投球ではなかった」
試合後に大谷は、初めてのメジャーリーガーとの対戦の中で、自分の投球をこう分析した。
3人の打者を振り遅れや詰まった打球で打ち取った大谷。
全12球中でストレートが10球というパワーピッチは、1イニング限定の登板ということでマウンドに上がる前から嶋基宏捕手と相談して決めていたことだった。
初めてのメジャー球。マウンドもこの大会用に特別にメジャー仕様の固くて傾斜のあるものに改造されている。
「マウンドに関してはウチ(札幌ドーム)も固いのでそれほど違和感はなかったですね。ボールに関してはブルペンで投げていたより、自分の感覚としては良くなかった。ただ、真っ直ぐで押し込めたのは良かったと思います」
対戦した3人の打者を、いずれも振り遅れのファウルや詰まらせた打球で打ち取ったこと。それが大谷の一つの自信になったことは確かである。
「年齢を考えても素晴らしい。100マイル(161km)近いボールを投げていたし、強い印象を受けた」
こう語ったのはMLBチームを指揮したジョン・ファレル監督だった。