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全日本駅伝に見る、箱根の“勢力図”。
駒澤が大本命も、「5強」に可能性が。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byNanae Suzuki
posted2014/11/07 16:30
全日本大学駅伝で圧勝した駒澤大学のメンバーと大八木監督。2008年以来の優勝はかなり現実的な目標になりつつある。2002年から4連覇した黄金時代を取り戻すことができるか。
明大は1区の文元が立ち直れば箱根優勝も見える。
駒大に続き、2位に入ったのは明大、3位は青学大だった。この2校は最終区でデッドヒートを繰り広げ、明大のエース大六野秀畝が青学大のアンカー神野大地を逆転した。
この両校の特徴は3、4年前からエリート高校生のリクルートで、圧倒的に優位に立っていたことだ。
明大は今年の4年生が黄金世代にあたり、大六野だけでなく、有村優樹(3区区間賞)、松井智靖(4区6位)、今回は走っていないが八木沢といったエリートランナーがひしめいている。
今回、意外だったのはこれまで1区で必ず結果を残してきた文元慧が1区で17位と出遅れ、先頭の駒澤とは1分51秒差をつけられてしまったことで、これは大きな誤算。しかしそこから2位まで盛り返したのだから、天晴れである。もしも文元がいつも通りの実力を出していたら、駒澤と明大が優勝争いを展開した可能性は十分にある。
「うれしさ半分、悔しさ半分」
これはレース直後の明大・西弘美監督の談話だ。
箱根では特殊区間(5区、6区)に課題を残すが、前半で波に乗れば、優勝争いに絡んでくるのは間違いないだろう。
主力に3年、2年が多い青学大は「ダークホース」。
「明治を勢いづかせちゃったなあ」
そう笑顔で話してくれたのは青学大の原晋監督だ。今回はベストメンバーを組み、全日本で3位は過去最高の成績。
青学の場合は、今年の3年と2年にエリートがどーんと入学してきている。今回のオーダーも、1区一色恭志(2年)、2区久保田和真(3年)、3区秋山雄飛(2年)、4区小椋裕介(3年)、7区渡邉心(3年)、8区神野(3年)と並び、これは来年こそ本命になるかも? といった布陣である。原監督も、序盤の展開には満足気。
「1区の一色、良かったでしょう? 先頭から30秒差だったら万々歳だと思ってたんだけど、積極的にレースを進めて48秒差。いいんじゃないですか。2区の久保田は久しぶりの駅伝でいい走りをしたと思います。箱根に向けて、楽しみが増えたよ」
そうは言いつつも、課題を残した区間もある。
「4区と7区が区間8位でしょ。これだと優勝には手が届かない。ミスじゃないけど、十分じゃない。箱根に向けてはより戦力を充実させないといけません。でも、学生は優勝が現実的なものに見えてきたんじゃないかな。それが良かったね」
全日本の3位で、箱根では優勝を射程距離内に捉えた「ダークホース」という扱いになるだろう。