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大学、鳥栖、代表と幸運を手にして。
坂井達弥は「運を実力に変える」。 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

PROFILE

photograph byTakuya Sugiyama

posted2014/09/22 10:30

大学、鳥栖、代表と幸運を手にして。坂井達弥は「運を実力に変える」。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

183cm、71kgと日本人選手としては恵まれた体格を持つ坂井達弥。左利きのセンターバックは攻撃展開の方向を広げる意味でも非常に貴重な存在だ。

大学、サガン鳥栖といい出会いを次々引き寄せて。

 坂井自身、運はいいほうだと感じているようだ。

 たとえば東福岡高校から大学に進学する際、本人は関西、関東の強豪校を希望していた。遠征のついでに希望校の練習に参加する予定だったが、ケガをしたことで一端見合わせた。その後、鹿児島の鹿屋体育大から誘われて練習に参加してみると「練習の雰囲気がいい」とフィーリングが合ったために方針転換して鹿屋への入学を決意した。

 鹿屋では1年時から試合に出場、天皇杯2回戦では当時J2の徳島ヴォルティスを撃破し、3回戦でもジュビロ磐田相手に延長戦まで粘っている。日本代表やJリーグのクラブが鹿児島キャンプに訪れると、練習試合の相手を務めたことも肥やしになった。彼の評価はグングン高まっていき、大学4年時には特別指定選手としてサガン鳥栖の練習に加わることになる。

 鹿屋体育大にしても鳥栖にしても、いい出会いは彼の運に拠るところもあるだろう。

「最初に一番きつそうなところに行っておいたほうがいい」

 しかし一方で、坂井自身が与えられた環境をうまく活かしてきたのも事実だ。大学を卒業するにあたって、ほかのJリーグのクラブからもオファーがあった。だが、彼はそのまま鳥栖入りを決めている。理由はこうだ。

「自分のタイプ的に、環境に合わせてしまうというかそういうところがあるので、最初に(練習が)一番きつそうなところに行っておいたほうがいいんじゃないかな、と(笑)。若いときに頑張っておけば、ベテランになってもやれるじゃないですか。だから一番、きついと言われているところに、行こうと思ったんです」

 簡単なほうには流されない。

 端正な顔立ちの裏に、芯の強さを秘めている九州男児である。

 運も実力のうち、とはよく言う。

 ただ、坂井を見ていると「運を実力に変える」という言葉のほうが当てはまるように感じてならない。

 日本代表にサプライズ選出された「強運」を無駄にしないだけの資質が、希少な左利きのセンターバック、坂井達弥にはある。

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