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大学、鳥栖、代表と幸運を手にして。
坂井達弥は「運を実力に変える」。 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

PROFILE

photograph byTakuya Sugiyama

posted2014/09/22 10:30

大学、鳥栖、代表と幸運を手にして。坂井達弥は「運を実力に変える」。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

183cm、71kgと日本人選手としては恵まれた体格を持つ坂井達弥。左利きのセンターバックは攻撃展開の方向を広げる意味でも非常に貴重な存在だ。

「自分でも『運、いいのかな』って」

――実際、代表を経験してみてどうでした?

「選ばれたときは本当にびっくりしましたし、自分でも『運、いいのかな』って思ったりもしましたよ。(合宿の初日は)テレビで見る選手の人たちだなって思ってましたけど、みんな気軽に話しかけてくれたりして、意外とすぐに溶け込めましたね。僕自身、いつもどおり、マイペースにやれました。

 代表でやれたことは、今考えてもいい経験になったなと思います。(ウルグアイ戦は)90分間凄く勉強になった。ホント、あっという間でしたね」

――「あっという間」のなかに相手に競り負けない強さを発揮できた場面や、逆に失点に絡んでしまうミスもありました。

「(試合が始まる前)結構、自分でも興奮していて、国のために戦わなきゃって奮い立つことができました。どれだけ自分が通用するかっていうよりは、ミスをしないようにって思っていたんですけど、緊張や局面、局面での迷いというものがちょっとありました。

 今思うとですけど、代表になったからと言って、求められるものがすぐにできるわけじゃない。あの試合、できないことはできないってもうちょっと割り切って、やっておけば良かったのかなあ、と。でもあの失点の場面以外は、そんなにやられた感じもしなかった。自信にはなりました」

代表に呼ばれる前は、自分を疑いはじめていた。

――代表を経験して、自分に変化を感じていますか?

「日本代表になってW杯に出るという目標は、以前から持っていました。でも今回呼ばれる前、“いつか代表に手が届くのかな。引退するまでに1回でも代表になれんのかな”って、自信を失っていたわけじゃないけど、ちょっと自分を疑いはじめていたというか……。そう思っていた矢先に、代表に呼ばれたんです。通用する部分、ビルドアップとか全然足りていない部分が明確に分かったし、また代表でやりたいなって凄く思うようになっています」

 まっすぐないい目をしていた。

 自分に対する信が揺らいでいた時期に、思いも寄らない代表招集が「救いの手」になった。信を取り戻す、いや、逆にその信を深められた実りある1週間だったように彼の口ぶりからは伝わってきた。あのトラップミスで落ち込むこともない。むしろ充実感のほうが彼の心を満たしていたのだから。

【次ページ】 大学、サガン鳥栖といい出会いを次々引き寄せて。

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