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「80歳まで投げられたら夢があるよね」
山本昌が忘れない“しつこい”子供心。 

text by

田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2014/09/13 10:40

「80歳まで投げられたら夢があるよね」山本昌が忘れない“しつこい”子供心。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

5日の阪神戦では老獪なピッチングで5回無失点に抑えて今季初勝利を挙げた山本昌。実はセリーグ最年長安打と打点記録も保持していて、今後打者としての最年長記録を更新するチャンスも巡ってくるだろう。

よく走り、ラジコンを封印し、体のケアに時間を費やす。

 フィジカル面でも、山本昌は面倒な作業をしつこく続けている。

 現在でもランニングや50mダッシュは欠かさない。ローテーションを任されている期間であれば、180m、110mなど距離を変えたダッシュを行うなど、しっかりとメニューを組み、淡々とこなす。

「走らなければダメだ」。投手にとっての原点を改めて痛感したのが、2002年だった。

 この年から中日の指揮を執ることとなった山田久志は、当時37歳とベテランの域に達していた山本昌を特別扱いせず、若手たちと同じ量を走るよう命じたという。

「俺、ベテランだよな? 若い奴らと同じだけ走ったら体力が持たないって」

 当初は、そんな本音を漏らしたかったと山本昌は話す。それでも「あそこで甘えなかったことが、今でも続けられているひとつの要因にはなった」と、ベテランという立場に甘えなかった自分に誇りを感じている。

 それはやがて、「1年でも長く続けるために」という強い意志となり、'10年には大好きなラジコンを封印。その時間をマッサージなどの体のケアに費やすようになったことが、結果的に現在の山本昌の大きなバックボーンとなったわけだ。

 面倒な作業でも、しつこいくらいに続ける。そんな真摯な姿勢があるからこそ、今季、開幕から二軍暮らしが続いたとしても、「ダメかも、と思うことはあっても諦めることはなかった」と言い切ることができるのだろう。

次なる頂は最年長勝利世界記録と「50歳で現役」。

 最年長勝利投手という、ひとつの頂には到達することができた。

 次に目指す頂は、ジェイミー・モイヤーが持つ49歳5カ月の最年長勝利の世界記録と「50歳まで現役」になるだろうか。

 いずれも、来季一軍マウンドに立つことができれば達成することができるだろう。

 本人は「50歳まで投げるかどうか、その辺は分かりません」と笑みを浮かべながら言葉を濁していたが、記録はともかく、ここまできたのなら投げられるまで投げてほしい、と切望するファンは数多くいる。

 山本昌自身、心のなかでは当然のようにその想いは強いはずだ。

【次ページ】 「岩田鉄五郎みたいに80まで投げたら夢があるよね!」

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