野球クロスロードBACK NUMBER
「80歳まで投げられたら夢があるよね」
山本昌が忘れない“しつこい”子供心。
posted2014/09/13 10:40
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
NIKKAN SPORTS
現役生活31年。プロ野球の歴史上、最も長くプレーしている山本昌に、「そこまで長く野球を続けられる理由ってなんでしょう?」と、無粋な質問をぶつけたことがある。
「レジェンド」、あるいは「球界のシーラカンス」と呼ばれる男は、その問いを真剣に受け止め、しっかりと咀嚼した後にこう答えてくれた。
「ガキだから、かな? よく、小学校の先生とかが生徒に『真面目に生活していれば、いつか必ずいいことがある』みたいに教えるじゃない。僕なんかも、それをずっと信じてやってきたからね。『野球の神様がいる』って信じているタイプだから。要するに、ガキのまま大人になった。そのガキが、意外と強かったってことですよ、ははは」
お立ち台で繰り返した「しつこい性格なので」。
浜崎真二(阪急)が1950年に達成した48歳4カ月の最年長勝利記録を、64年ぶりに塗り替えた9月5日の阪神戦。お立ち台に上がった山本昌は、インタビュアーの「なぜ、ここまで頑張れるのか?」という問いに、「しつこい性格なので」と返答した。
念を押すようにインタビュアーが同じ質問を繰り返しても、答えは同じだった。
「しつこいからじゃないですか」
山本昌の言葉を借りれば、「子供のようにしつこい」と言い換えられるだろうか。
「エデンの東」などで知られる作家、ジョン・スタインベックは、『天才とは、山の頂上まで蝶を追う幼い少年である』という名言を残している。山本昌なら、しつこく野球を追い続けた結果、最年長勝利記録という頂に到達した、といったところだろう。
スタインベックの名言を知っていた山本昌は、控えめな持論を交えながら自身の登頂を述べていたものだ。
「蝶を追いかける……僕はね、そんなのばっかりだから。色んなことを経験して多くの知識を身に付けていったけど、意外と大したことがなかったっていうね(苦笑)。だってさ、ダルビッシュみたいにそれを結果に繋げられていたら、400勝していたかもしれないじゃない。そんななかでも、技術とか色々と磨いてここまでやってこられたのは、僕らしいと言えば僕らしいんだけど」