ベンゼマがマドリーで不動の地位を築いた理由。

　爆発的なスピードも2、3人をかわすテクニカルなドリブルも、遠目からのシュートも持たないカリム・ベンゼマが、なぜこのクラブで不動の地位を築き、6シーズンも生き残っているのか。理由はただひとつ、ベンゼマが他を優先する、気のきいたプレーができる選手だからだ。

　サイドに開きロナウドやベイルの為にスペースをあけ、10番ばりのスルーパスも出せる。極力我は出さない。モウリーニョはもっと怒りを出せと指導したが、彼の本質は変わらなかった。しかしそれが、強烈な個を持つロナウドやベイルとぴたりとはまっている。クラブが先月、'19年までベンゼマとの契約を延長したのも頷ける。

ディマリア放出を最後まで止めようとしたロナウド。

　そしてそれは、先日マンチェスター・Uへと移籍したディマリアも同じだった。

　ディマリアは、ベンゼマと同じく他を考えてプレーすることのできる選手だ。デシマ獲得の最大の功労者は、ロナウドでもベイルでも、セルヒオ・ラモスでもなく彼だった。

　昨夏右サイドにベイルが加入すると、彼は中盤へコンバートされた。もちろん彼はすべてを受け入れた。ウイングでプレーしたい、などと問題も起こさない。

　中央でのMFとしてのプレーがまた秀逸だった。

　守備時には誰よりも走り、ロナウドとベイルの負担を軽くした。ボール奪取後は、持ち味のスピードとドリブルで縦へボールを運び、ふたりに好機をお膳立てした。

　ロナウドは最後までディマリアの放出を止めようとしたという。過去には、ディマリア残留を直訴したこともあった。自らの数m後ろで駆け回っていたディマリアは、ロナウドにとって最もプレーしやすい選手だったのだ。

　ディマリアはクラブ幹部と折り合いが悪く、しかも今夏は同ポジションにハメスを獲得したことで、マンチェスター・Uへと移籍した。

　しかしそれは多くの選手の意向に反するものだった。マドリディスタの間にも、ディマリア放出には首を傾げる人の方が多い。

【次ページ】　まだまだ発展途上の3人のコンビネーション。