サッカーの尻尾BACK NUMBER
ハメスが苦しむ、マドリーの「掟」。
ロナウド&ベイルの脇役になれるか。
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byAFLO
posted2014/09/05 16:30
ブラジルW杯でコロンビアの攻撃を一手に担ったハメス・ロドリゲスは、レアル・マドリーでロナウド&ベイルを支える脇役として輝けるのか。
まだまだ発展途上の3人のコンビネーション。
今季ハメスに与えられた3MFの左というポジションは、まさに昨季までディマリアがいた場所だ。
ディマリアにかわってハメス。
当然、比較は避けられない。
ハメスにはディマリアのようなスピードも、守備的献身も、運動量もない。持ち味はより前方、中央での得点に絡むプレーだ。シュートパターンや前線に飛び込む感覚、得点力に関しては、むしろディマリアよりも上だろう。
しかし前述のように、マドリーの選手に課される鉄則は、まずはロナウドとベイル、である。その意味で、ロナウド&ベイル&ハメスの関係は、まだまだ発展途上だ。
最大の敵はファンの頭に刻まれた「記憶」。
シーズン前、アンチェロッティはこんな話をしている。
「今季も昨季から続くスタイルは変えない」
ハメスとクロースが加入し、よりポゼッション志向になるかとも思われたが、指揮官はそれを否定し、これまでのカウンター型の継続を示唆している。
そうなると、ハメスにとってはなかなか大変な試練が待っていることになる。
縦に速い展開の中、ディマリアのような単独ドリブルが期待できない中、彼は自らのプレーとチームのスタイルにどう折り合いを付けるのか。
そしてディマリアのように、自分ではなく他を最優先とできるか。それができたとしても、今度は彼の存在意義が問われるだろう。
ハメスは本当にディマリアを越えられるのか。ファンの頭には、デシマをもたらしたアルゼンチン人ミッドフィルダーの姿がまだ鮮明に残っている。
ハメスは目の前の敵だけではなく、ファンの頭の中に刻まれた記憶とも戦わなければならないのである。