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夢破れた後に残っていた「山河」。
長友佑都が故郷で取り戻した“原点”。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byGetty Images
posted2014/07/23 10:40
GL敗退が決まったコロンビア戦、両チームトップの11.3kmを走った長友はピッチに座り込んでしまった。インテルのチームメイト、グアリンは長友の健闘を称え、慰めた。
メディアの前に一切姿を現さず、訪れた「故郷」。
夢破れて。
この長友の言葉を横で聞いていて、ふと学生時代に習った杜甫の詩「春望」を思い出した。
「国破れて山河あり」
たとえ国家は破れ滅びようとも、山や川、自然は元のままという意味だ。
長友は「夢破れて」帰国してから、メディアの前には一切姿を現わさなかった。イベントの参加も一切なし。“雲隠れ”に近い形だった。
その間長友は、オフを使って自分自身をしっかり見つめ直そうと考えていたようだ。旅の行き先の一つは、彼が生まれ育った愛媛だった。
故郷である西条市は西日本最高峰である石鎚山のふもとにあり、水のおいしい町としても有名だ。自然に溢れる故郷の「山河」を見て、彼は一体、何を思ったのか――。
「自分の原点にすべて答えがあるのかなと」
長友は中学までこの町で育った。地元愛媛FCのジュニアユースに入れず、恩師・井上博と出会う西条北中も、サッカーの強豪校ではなかった。不良の巣窟を「日本一熱いサッカー部」に変えようとする井上の熱意に打たれ、井上もまた長友のヤル気を買って練習メニューをゆだねた。そんな熱い毎日を、思い出していたのではあるまいか。
長友は言った。
「一番大事なところは人間的な部分をもう一回、見直したいな、と。そこを修正できればサッカー選手として成長できると思っているんで。
初心に戻ること、自分の原点にすべて答えがあるのかなと(地元に)帰ってみて、そう思った。原点の場所に帰って気づく部分もあって、そこにたくさんの答えがあった。自分のなかでは『見つかった』という感触があるんです。
自分が育った場所、環境、グラウンドを見ると、当時の思いがよみがえってきて、どういう気持ちでサッカーをやってきたのか、どう自分がチームプレーに徹していたのか、そういうのも見えてきた。自分のなかでそれが大きな答えになっているので(これからの自分が)楽しみだし、今はポジティブなエネルギーに満ちている」