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夢破れた後に残っていた「山河」。
長友佑都が故郷で取り戻した“原点”。
posted2014/07/23 10:40
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Getty Images
立ち直りが早い。
これも長友佑都のちょっとした魅力なのかもしれない。
7月20日、新シーズンに向けてイタリアに戻るべく彼は成田空港にいた。集まった多くのメディアを前にして、こう語った。
「夢破れて挫折を味わってきて……ただ(次を)目指すチャンスがある、と。そこに向けて、最後になるぐらいの気持ちで懸けていきたいというのがある。(ブラジルW杯のために)この4年間懸けてきたけど、それ以上に、次の4年間に懸ける思いが強くなるんじゃないかなっていう思いがあります」
決意に満ちた実にいい表情をしていた。
約1カ月前――。
コロンビア戦の翌日、イトゥのベースキャンプ地でメディアの取材に応じた彼の目は赤く腫れていた。最後の食事で「もう1回W杯を戦えるとしても、私はここにいるメンバーを選ぶ」と涙ながらに挨拶したアルベルト・ザッケローニ監督の言葉を聞いて、涙腺が決壊したのだ。
「最高の監督、スタッフ、チームメイトがいるのに、これで終わってしまう寂しさがあって、それに監督の最後の言葉がね……。そこがもう悔しくて」
取材エリアで彼は再び感極まって、言葉に詰まった。
一度は代表引退を考えた衝撃の日から1カ月。
大会前「W杯を機に、人々の記憶に残るような語り継がれる選手になっていきたい」と意気揚々とブラジルに乗り込みながらも、彼の自信は世界の壁にはね返された。
初戦のコートジボワール戦では自身のサイドからクロスを送られて2点を失い、反撃もかなわなかった。ザックジャパンのストロングポイントである左サイドが消され、彼はその責任を強く感じてしまう。残り2戦もチームのために必死に走ろうとするものの、どこか歯車が噛み合わないままでW杯を終えることとなった。
一度は代表引退を考えるほどの大きなショック。1カ月経ってみて、どれほど気持ちを持ち直しているというのか。それを直接確かめておきたくて筆者も成田に向かったのだが、どうも余計な心配だったようだ。