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最強の攻撃陣を封じあった120分間。
アルゼンチン、'90年以来の決勝へ。 

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細江克弥

細江克弥Katsuya Hosoe

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posted2014/07/10 12:50

最強の攻撃陣を封じあった120分間。アルゼンチン、'90年以来の決勝へ。<Number Web> photograph by Getty Images

バルセロナでもなかなか見せないような表情で、感情を爆発させたメッシ。メッシにとって「最後のタイトル」であるW杯まであと1つだ。

両監督の交代は効果的だったが、得点には至らず。

 ハーフタイム、イエローカードを受けていたブルーノ・マルティンスインディに代えてダリル・ヤンマートを投入すると、ディルク・カイトを左サイドMFに変更し、左サイドのダレイ・ブリントを3バックの一角に下げる。さらに、62分には故障明けのナイジェル・デヨングに代えてヨルディ・クラシーを投入。クラシーにはデヨングが担っていた“メッシ対応”の大役を引き継がせつつ、同時に彼の展開力で中盤の構成力を高めようとした。

 試合はその狙いどおりに動き始め、オランダが主導権を握る時間帯が続いた。アルゼンチンは守備ブロックを作って構える時間が続き、それまでピッチ中央にあったゲームの力点が、徐々にアルゼンチン陣内に押し込まれていく。

 しかし、アルゼンチンの指揮官アレハンドロ・サベージャの対応も早かった。状況を敏感に察知し、挽回を期するカードを切る。

 エンソ・ペレスとゴンサロ・イグアインに代えてピッチに送り込まれたのは、ロドリゴ・パラシオとセルヒオ・アグエロの両アタッカーだ。つけ入る隙を見せない守備隊形を維持しながら、カウンターの枚数を増やす采配でオランダを牽制する。しかし、それも局面打開の特効薬とはならず、試合はスコアレスのまま延長戦に突入した。

120分間でシュートは両チーム合わせて15本だった。

 オランダの指揮官が最後に切ったカードは、コスタリカ戦で“PKストッパー”としての存在感を示したGKティム・クルルではなく、FWクラースヤン・フンテラールだった。試合後、ファンハールは「クルルを起用したかった」と話したようだが、延長戦で勝負を決めようとした攻撃的な采配に非はない。コスタリカ戦は賭けに勝ち、この試合では賭けに敗れたというだけのことである。

 結局この日、攻撃陣に世界屈指のタレントを抱える両者の対戦で120分間を通じて生まれたシュートは、両チーム合わせて15本だった。

 大会直前、「自分たちのスタイル」を捨てる決断を下したオランダは、ロッベンやファンペルシ、スナイデルらの「個の力」によって4強まで勝ち進んだ。3バック、あるいは5バックにも変形する急造システムは初戦のスペイン戦で見事にハマり、その勢いに乗って戦前の下馬評を大きく覆す快進撃を見せた。大会前の期待感の小ささを考えれば、大躍進と言っていい。3位決定戦の結果がどうなろうと、彼らが大会を通じて見せた伝統国としての意地は記憶に残るものだった。

【次ページ】 「走らないメッシ」の存在感が相手を脅かす。

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