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最強の攻撃陣を封じあった120分間。
アルゼンチン、'90年以来の決勝へ。 

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細江克弥

細江克弥Katsuya Hosoe

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posted2014/07/10 12:50

最強の攻撃陣を封じあった120分間。アルゼンチン、'90年以来の決勝へ。<Number Web> photograph by Getty Images

バルセロナでもなかなか見せないような表情で、感情を爆発させたメッシ。メッシにとって「最後のタイトル」であるW杯まであと1つだ。

「走らないメッシ」の存在感が相手を脅かす。

 しかし問題は、彼らが「自分たちのスタイル」を捨てて得た結果が未来にポジティブな影響を及ぼすか否かである。今大会でチームに勝利をもたらしたのは、4年前の大会でも決勝進出の立役者となった世界的な知名度を誇るビッグスターと、目の前の勝利を優先して“らしさ”を捨てる決断を下した指揮官である。

 おそらく世代交代の真っただ中で迎える4年後、今大会に出場した若手がどのような成長を遂げるかによってオランダの未来が変わる。ブラジルでなりふり構わずに戦った結果が吉と出るか凶と出るか、その答えは4年後のロシアで分かる。その頃チームにはおそらく、ロッベンもファンペルシも、スナイデルもいないのだ。

 我慢強く決勝進出を勝ち取ったアルゼンチンも、この試合ではチームとしての能力の高さを見せることはできなかった。しかし、24年ぶりに手にした世界一決定戦の切符は、オランダにはない大きな希望だ。

 ハビエル・マスチェラーノを軸とする守備の堅さは言わずもがな、「走らないメッシ」はいつの間にか確固たる戦術と化し、勝負どころで急激にスピードを上げるスタイルで相手に脅威を与えている。オランダに対しても、故障明けのデヨングの消耗を早めたのはメッシの存在感だ。プレーへの関与は一時期と比較して明らかに少ないが、存在感だけは十分過ぎるくらいにある。

24年前、アルゼンチンはドイツの前に決勝で散った。

 ドイツとのファイナルは、24年前に涙をのんだイタリアW杯決勝の再現となる。あの試合ではディエゴ・マラドーナと並ぶ2大エースとして活躍したクラウディオ・カニージャを含めて、4人もの主力が出場停止処分で欠場した。しかし今回は、オランダ戦を欠場したアンヘル・ディマリアの復帰が見込まれており、セルヒオ・アグエロもコンディションを上げてくるだろう。戦力面の充実度で言えば、明らかに24年前を上回っている。

 W杯のタイトルは、クラブレベル、個人レベルであらゆるタイトルを総なめにしてきたメッシの価値を「史上最高」に高めるためのラストピースである。アルゼンチンにとって因縁のドイツを相手に、しかもブラジルの聖地マラカナンでそれを実現できること以上に最高のシチュエーションがあるだろうか。

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