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ブレーブスがたった20年で球場移転?
スポーツビジネスと地方行政の蜜月。 

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菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

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posted2014/06/16 10:30

ブレーブスがたった20年で球場移転?スポーツビジネスと地方行政の蜜月。<Number Web> photograph by Getty Images

ブレーブスの本拠地、「ターナー・フィールド」。かつて、1996年アトランタオリンピックのメイン競技場として利用された、アトランタの象徴的なスタジアムでもある。

プロスポーツの招致に、地方行政も積極的。

 しかもコブ郡自体がブレーブス誘致に積極的に動いた。

 アトランタの地元紙が報じたところでは、今年5月に郡評議会が新球場建設プランを全員一致で承認したのだが、球場及び駐車場などの諸施設建設費用6億2200万ドルのうち3億9200万ドルを郡が負担するというのだ。

 さらにいろいろ調べてみると、ブレーブスが新球場建設プランを公表した際の試算によると、今後もターナー・フィールドを使用するためには改修費及びファン関連の施設建設で3億5000万ドルが必要となり、それをブレーブスが負担しなければならないが、新球場に移転すれば、開業後30年間で維持費としてブレーブスが負担する額は8000万ドルに留まるとしている。

 しかも現在のターナー・フィールドは『アトランタ-フルトン郡レクリエーション協会』が所有し、ブレーブスにリースされているのだが、ブレーブスが球場周辺を開発する権利は一切認められていない。

 しかし、コブ郡はブレーブスに球場周辺の開発権を認め、ブレーブスはショッピングを含めた娯楽施設の建設を予定している。つまりブレーブスにとってより集客性を高める総合エンターテイメント施設を建設することが可能になるわけだ。

本拠地移転はNBAやNFLでも常態化している。

 このように米国のプロチームの運営において地方行政は大きな役割を担っている。もしフルトン郡がブレーブスに積極的な支援を行なっていたら、ターナー・フィールドに留まっていた可能性は高い。

 今回はあくまでアトランタ地域内での移転に留まっているが、NBAやNHL、NFLの他競技リーグでは今も本拠地移転が日常化している。

 例えば、つい最近までNBAのキングスは本拠地移転で揺れに揺れていた。

 前オーナーと現在の本拠地であるサクラメント市が、長年の懸案事項であった新アリーナ建設に一旦は合意しながら最終的に決裂。

 その後、前オーナーは、シアトルにNBAチーム誘致を目指す投資グループにチーム売却に合意し一件落着かと思いきや、今度はサクラメント市が市と行動を共にする投資グループを見つけ、新アリーナ建設とチーム買収を企てた。

【次ページ】 熾烈な誘致運動の裏にあるビッグビジネス。

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