同じことを“出し手”の立場で語った酒井宏樹。

　翌日、ホテルで行なわれた囲み取材において、まったく同じことを“出し手”の立場から口にしたのが、右サイドバックの酒井宏樹だった。

　酒井宏樹は、上がり切る前に出す高速クロスを得意にしている。「サイドからのクロスをどう工夫するか」というテーマを振ると、岡崎と同じ攻撃の形が出てきた。

――キプロス戦後に大久保嘉人選手が「単純にクロスを上げるだけではダメ」と工夫を要求していた。クロスに関してチームメイトと話をしている？

「そうですね、（柿谷）曜一朗くんとは結構話しています。背の高い相手をクロスで崩すには、タイミングをずらしたりとか、一瞬の差が鍵になると思うので。それで点が入るか、入らないかというレベルの舞台に来ていると思う。そういう要望にプレーを合わせられるように、早めに予測してクロスを上げるようにしています」

――柿谷選手からは、どんな要望が？

「とりあえず僕がボールを持った瞬間に走っているから、と。『中を見てから上げたのでは遅い。このへんにいるから、絶対に走り込んでいるから上げてほしい』というふうに言われています。そこはもう信頼関係ですね」

受け手がサボれば大恥。しかし確実に相手の虚を突ける。

　いくら裏のスペースといえど、出し手からしたら、自分の目で確認しないでパスを出すのは恐いだろう。もし受け手が走ってくれていなかったら、トンチンカンなパスになってしまう。誰もいないスペースへのパスなので、簡単にカウンターを食らうことはないだろうが、相手にボールをプレゼントしてしまうことに変わりはない。受け手がサボったら、出し手は大恥をかく。

　だが、本当に受け手が走っていて、さらにうまくつながれば、目を疑うほどに鮮やかな決定機が生まれるだろう。なにせ見ないでパスを出すのだ。相手は虚を突かれ、確実に反応が遅れる。

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