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指導者となった“2人のインザーギ”。
セリエAで兄弟対決が見られる日は?
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2014/05/27 16:30
UEFAユースリーグでチームの指揮を取るフィリッポ・インザーギ。彼のDFラインの裏を取る能力はアレックス・ファーガソンから「オフサイドポジションで生まれた男」と評された。
かつてのアイドルは、名門再興を託すべき切り札か。
欧州中のGKが恐れたミランの元9番は、攻撃的な4-3-3を好む。しかし、根底にあるのは、やはり現役時代の恩師アンチェロッティ(現R・マドリー)のサッカーだ。監督として3度目のCL優勝を果たしたばかりの名将は、まだ指導者歴の浅いフィリッポにとって偉大なベンチマークだ。
「両サイドのウイングを高く置くグアルディオラのサッカーは好きだよ。ただし、手持ちの戦力に応じて、最も適した戦術を選べるのが優れた監督だ。必要とあればガチガチに守ることを厭わなかったアンチェロッティの柔軟な戦術適応力は何より見習いたい」
今年1月、フィリッポにはセリエAの監督になるチャンスがあった。だが、ミラン上層部は、残留争いをしていたサッスオーロからのオファーを頑として認めなかった。
生え抜き指導者として大事に育てている伝説のストライカー“スーペル・ピッポ”を、簡単に手放すわけにはいかない。かつてのアイドルに対するミラニスタたちの支持も絶大だ。低迷に苦しむミランにとって、フィリッポ・インザーギは、名門再興を託すべき次世代監督の切り札候補なのだ。
兄に指導者への道を強く勧めた、弟シモーネ。
「兄貴がもう1年現役を続けたがったのは知っていた。だが、俺は『指導者になってほしい』というミランの申し出を受けるべきだと強く勧めた。若い選手たちを指導することは、表現しがたい感動を与えてくれるからだよ」
兄フィリッポに指導者への転身を促したのは、3つ年下の弟シモーネだった。
W杯王者にもなった兄と比べて獲得タイトルの数では劣るが、シモーネもまたラツィオのクラブ史に名を残す名FWであることは間違いない。
'00年にスクデットを獲ったチームの得点源だっただけでなく、同じ年のCLでは、マルセイユ相手に1試合4ゴールの離れ業をやってのけた。欧州カップ戦での通算20得点はラツィオのクラブレコードだ。