現役で1度しかなかった退場を、すでに4度経験。

　2年前の初秋、監督フィリッポ・インザーギのデビュー戦を見たくて、ビスマーラ練習場へと足を運んだ。

　ユニフォームを脱いだ彼は、一気に10年も老けこんだように見えた。ただし、残暑の中、白いシャツを腕まくりした彼の目は、ギラギラと精悍なままだった。

　試合中、テクニカルエリアとベンチを忙しなく往復する姿に、DFラインの裏を取る現役時代の動きが重なった。第4審判の目を盗みながら、少しでもタッチラインに近づいて、声を張り上げていた。半分以下の年齢の選手たちが得点を決めるたびに「落ち着け！」と指示を飛ばすフィリッポ本人が一番慌しかった。

　長い現役時代の間にたった1度しかなかった退場処分を、フィリッポは2年の指導者人生でもう4度も経験している。トップチームの監督就任が取りざたされているが、サンシーロに姿を現す時には、もう少し自重できるようになっているだろうか。

セリエAの舞台で、兄弟対決が見られる日は？

　指導者となったインザーギ兄弟は一度だけ、すでに敵として相まみえたことがある。

　昨年3月、U-16国内トーナメントのグループリーグ最終節は、ラツィオがミランを2－0で下した。

「現役時代、いつもピッポは自分の前を走っていた。彼に追いつこうと、いつも必死だった」

　兄弟対決の軍配は、指導者として一日の長がある弟シモーネに上がった。もちろん、兄フィリッポもやられっ放しでは終われない。

「俺とシモーネは、育成年代から叩き上げで研鑽する道を選んだ。これが監督としての成功につながると俺たちは信じている」

　ずっと昔、ミラノとローマへ別れてしまった兄弟ストライカーは、それぞれ愛するクラブに引退後も留まった。彼らはきっと、サンシーロとオリンピコに帰ってくる。セリエAの舞台で、インザーギ兄弟の監督対決が見られる日はそう遠くないはずだ。