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指導者となった“2人のインザーギ”。
セリエAで兄弟対決が見られる日は?
posted2014/05/27 16:30
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
AFLO
“2人のインザーギ監督”が、イタリア指導者界に新風を呼び込んでいる。
ともに名ストライカーだった兄フィリッポ・インザーギと弟シモーネ・インザーギが、それぞれミランとラツィオの育成部門で、指導者として着実にステップアップを続けているのだ。
「この世界じゃ『選手はよく眠るべし。監督は寝る間を惜しんで仕事せよ』っていうけど、実際指導者になってみて、その通りだと思い知ったよ」
一昨年の5月まで現役プレーヤーだったフィリッポは、ミランのU-16チームの監督就任を条件に引退を決断した。彼の戦場は、華やかなサンシーロからミラノ郊外のビスマーラ練習場へと変わった。
監督としてのキャリアを少年チームから始めたフィリッポは、指導メソッドを学び、戦術アナリストに耳を傾け、リーグ戦をこなしながら、地道に指導者として生まれ変わっていった。
ユースの国際大会を制覇、フィリッポは快哉を叫んだ。
フィリッポ監督は厳しい。
選手たちの食生活に口を出し、PCの電源は1日1時間で落とさせる。学校の成績が悪い者はプレーさせない。
ただし、起用法や結果には監督自らが責任を負った。豊富な経験によって、選手心理の機微を誰より知るフィリッポは、結果が出なくて苦悩する少年たちをさり気なくフォローし、奮起を促しながら、多感な時期にある彼らの信頼を勝ち取っていった。
「選手たち全員に自らのポテンシャルを出し切ってほしい。俺たちの世代にあったサッカーの理想を伝えたいんだ」
指導者歴2年目を迎えた昨年夏、フィリッポはプリマベーラ(=ユース)部門の監督に昇格し、同年代の選手と指導者にとっての登竜門となる国際大会「トルネオ・ディ・ビアレッジョ」を制した。
ミラン育成部門にとって13年ぶりの快挙だった。自ら手塩にかけて育てた選手たちとトロフィーを掲げたフィリッポは、自分自身がプレーしたかのように勝利の快哉を叫んだ。