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「世界9位」より重い「ナダル圧倒劇」。
錦織圭が得た“トップ5”という評価。

posted2014/05/14 11:15

 
「世界9位」より重い「ナダル圧倒劇」。錦織圭が得た“トップ5”という評価。<Number Web> photograph by AFLO

「応援していただいた皆さんにお詫びをしないと」とコメントした錦織。クレーコートで行われる全仏オープン(5月25日開幕)は、コーチのマイケル・チャンが1989年に優勝した大会でもあるので、大いに期待したい。

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秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

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 コートサイドで試合を見つめるコーチ、トニ・ナダルの表情がすべてを言い表していた。

 ラファエル・ナダルの叔父でもある彼の目の前にあったのは、にわかに信じられない光景であったはずだ。過去6戦全勝の錦織圭に、ナダルが一方的に叩かれていた。錦織がゲームを支配し、ナダルはそれに対応するだけだった。トニコーチは途方に暮れているように見えた。そのボディランゲージが弱々しかった。

 マドリード・オープン、5月11日の男子シングルス決勝で、錦織は世界ランク1位のナダルから第1セットを奪い、第2セットも相手のサービスゲームを先にブレーク、4-2と先行した。ナダルからの初勝利と、マスターズ1000グレード大会での初優勝まで、あと2ゲーム取るだけでよかった。

スペインの観客も、錦織のスピーチに拍手を送った。

 しかしこの時、錦織の体は限界に近づいていた。

 数日前から痛みの出ていた腰と臀部、さらに下半身全体が悲鳴を上げていた。トレーナーのマッサージを受けたが回復にはほど遠く、結局、4-2以降は1ゲームも奪えず、セットを失う。第3セットに入ると動くことも困難になり、3ゲームを続けて失ったところで棄権を申し出た。

「このような形で試合を終えることになり、残念です。マスターズ1000では初めての決勝で張り切っていましたが、すでに故障をかかえていました。ラファのプレーもよかったと思います。素晴らしい1週間でした。スペインでは、バルセロナでも優勝できましたし、まるで第二の故郷のような気がしています。また、来年戻ってきます」

 試合中は一方的にナダルを応援した地元スペインの観客も、錦織の準優勝のスピーチに盛大な拍手を送った。カリスマコーチの一人、ダレン・ケーヒルはツイッターで「錦織を支持する。二人とも勝者だ」と悲運の敗者にエールを贈った。

【次ページ】 2008年以来、ナダルからはセットも奪えなかった。

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