日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER
今野泰幸は“背負い込む”タイプ。
責任感が壁になる、という試練。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2014/05/01 10:40
日本代表78キャップは歴代9位タイ。前へのチェックと高い機動力でザッケローニからの信頼も厚く、ブラジルW杯のキーマンのひとりであることは間違いない。
背負い込む。
辞書を引けば「負担になることを引き受ける」とある。
ザックジャパンの守備を支える今野泰幸は、どちらかと言うとそういうタイプなのかもしれない。実直な性格の彼らしいところである。
「僕が入って失点したので、舌を噛んで死のうかと思った」
4月19日、大宮アルディージャ戦。前節に左膝を打撲して先発から外れた今野は1-0とリードした状況で途中出場した。直後、同点に追いつかれてしまったが、最後は自ら豪快なミドルシュートを突き刺して勝利するという試合展開だった。2-1でガンバ大阪は6試合ぶりの勝利を挙げている。
しかし翌日の新聞を広げてみると、冒頭のコメントが載っていた。過激な表現ではあるにせよ、軽々しくそのような言葉を口にする男では決してない。今野は言うまでもなく、ザックジャパンの中心選手としてブラジルW杯を迎えようとしている立場。チーム立ち上げからセンターバックのレギュラーを務め、アルベルト・ザッケローニ監督の信頼を勝ち取ってきた。大舞台を前にして、今野がどのような壁にぶち当たっているというのか。
守備重視で投入されたのに、入ってすぐ失点。
大宮戦から数日後、ガンバ大阪のクラブハウスを訪れ、彼に直接、胸のうちを聞くことにした。その日の大阪は、気温20度を超える陽気だった。練習場所の万博記念競技場に、黙々とトレーニングに励む今野の姿があった。左膝に対する不安もないようだ。
練習を終え、クラブハウスに戻ってきた今野に冒頭のコメントについて尋ねた。穏やかな表情ではあったが、言葉が出てくるまでに少し時間がかかった。
「守備固めというか守備重視で投入されたのにもかかわらず、チームがすぐに失点してまったことに対して、『えっ』て心のなかで思ったんです。
今シーズン途中から、ボールの感覚というか、攻撃のイメージとか、自分の感覚が全然良くない。それにガンバは今、なかなか結果が出ていないじゃないですか。ひょっとして自分が出ているから、結果が出ないんじゃないかって考え込んでしまっていて……。それでまた、1-0と先制したのに、俺が出てまた同点に追いつかれてしまったわけですからね」