日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER
今野泰幸は“背負い込む”タイプ。
責任感が壁になる、という試練。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2014/05/01 10:40
日本代表78キャップは歴代9位タイ。前へのチェックと高い機動力でザッケローニからの信頼も厚く、ブラジルW杯のキーマンのひとりであることは間違いない。
リーグでのチームの順位とW杯での活躍は比例しない。
しかし、実直さばかりでは克服できないこともある。
確かにJリーグでトップ争いに食い込む活躍を見せてメンバーに選ばれるなら、誰もが納得がいく。しかしそれはあくまで理想だ。第10節終了時点でガンバは15位。前回の2010年(第10節終了時点)で見ても、岡田ジャパン主力の遠藤保仁を擁するガンバは12位。今野や長友佑都が所属したFC東京は14位であったが、南アフリカW杯における遠藤や長友の働きはどうだったか。
今野にはザックジャパンの立ち上げから実績を積み上げてきたアドバンテージがあり、ガンバのチーム状況でメンバー入りが左右されるような立場でもないはずだ。また、難敵がそろったW杯のグループリーグを考えれば、今は迷いを深めている状況でもない。爪はしっかりと研いでおかなければならないだろう。チームで全力を尽くしつつも、必要以上に背負い込むことがときにマイナスに出る場合だってある。自分を見失わないことにもつながるからだ。
出身地東北のためにも、立ち止まる時間はない。
今野にはブラジルの地でやらなければならない仕事が待っている。東日本大震災で被災した宮城県の出身で、Jリーガーの有志でつくる「東北人魂」のメンバーとしても活動を続けている。小笠原満男らとともに、オフには被災地を回ってサッカー教室にも参加している。以前、東北人魂の活動について尋ねたとき、こう言っていた。
「(被災地では)サッカーをやりたくても道具が不足していたり、環境がなかったりすることもあります。そんな子供たちをちょっとでも元気づけられたら、という思いで活動をやっています。そして僕らがピッチで精いっぱいプレーすることで、何か励みになってもらえれば嬉しい」
被災地の子供たちに、元気を与えたい――。
己に課せられた使命を思えば、スランプに陥っている場合ではない。今野泰幸に立ち止まっていい時間などないのである。自分ばかりで背負い込もうとせず、周りともっと責任を共有してもいい。