サッカーの尻尾BACK NUMBER
「カガワもホンダも素晴らしい」
イブラが語った人生、そして日本。
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byTomoki Momozono
posted2014/04/11 17:20
PSGのクラブハウスでおよそ30分のインタビューに応じた。広報担当者もイブラヒモビッチがインタビューを受けることに驚いて連絡をしてきたという。
モウリーニョと話したときと似た、ある感覚。
サガン鳥栖の播戸竜二からの質問への答えも印象に残っている。それは「キャリア後は何をするのか」というものだった。
「正直にいって考えていないんだ。というか、プランニングをしないようにしている。これまでは割と計画を練ってきたんだが、何かをプランする度に別の人生になっていった。色んなクラブを渡り歩いてね。だからなるようになるさと運命に任せている。引退後は、もしかしたら監督になるかもしれないが、何とも言えないな」
あっという間に時間は過ぎ去っていった。
取材後、昨年10月にロンドンでモウリーニョと話したときと似たものを感じた。
イメージと、実際に対話をした際に感じるギャップ。彼らは、問題児でもバッドボーイでもないのだ。
「本当に大事なことは、生身の人間の言葉にある」
インタビューの中で、イブラヒモビッチは言っている。
「本当に大事なことはメディアの中にはなくて、生身の人間が言ってくれる言葉にあるんだ」
イブラヒモビッチに会ってから30分後、彼への印象は大きく変わっていた。
チェルシー戦のビデオでふたりが垣間見せたのは、隠された彼らの柔らかな部分、人間味のかけらだったのではないか。
イブラヒモビッチは第1戦での負傷により、この試合ではプレーすることができなかった。彼がいたら……と誰もが思った。きっとイブラヒモビッチ自身もそう思っていたに違いない。スタンドで苦境に立たされるチームを眺めることほど悔しいことはない。
それでも、敗れた対戦相手の監督に、笑顔で幸運を祈る人間としての深さが、バッドボーイと言われるこの巨人には備わっている。
彼らの言葉みたいに真っすぐな1秒間の抱擁に、多くの人々が心を動かされた。
次に彼らがピッチ上で会うのはいつのことだろう。
イブラヒモビッチとモウリーニョというふたりの人間に対する興味は、このビデオを見てさらに深くなるのだった。