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「カガワもホンダも素晴らしい」
イブラが語った人生、そして日本。  

text by

豊福晋

豊福晋Shin Toyofuku

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photograph byTomoki Momozono

posted2014/04/11 17:20

「カガワもホンダも素晴らしい」イブラが語った人生、そして日本。 <Number Web> photograph by Tomoki Momozono

PSGのクラブハウスでおよそ30分のインタビューに応じた。広報担当者もイブラヒモビッチがインタビューを受けることに驚いて連絡をしてきたという。

イブラは、想像とは全くことなる人物だった。

 イブラヒモビッチは、この種の独占インタビューを受けないことで有名な選手だ。彼が話すのは、クラブ公式のPSG TVや、義務化された記者会見くらいのものだ。

 しかし彼に実際に会って、なんとか確かめてみたかったことがあった。

 イブラヒモビッチは本当に報道されているような、どうしようもない“バッドガイ”なのか――ということだ。

 不可能ともいえるアポを取るため、各方面から、PSGに追い込まれたチェルシーのように攻め続け、ほとんど奇跡的に接触することに成功した。

 貴重な機会だから、訊きたいことは山ほどある。しかし時間は限られている。あまりに多くの質問をすると機嫌を損ねて、席を立ってしまうかもしれない。曖昧な答えの連続かもしれない。運が悪ければ、回し蹴りが飛んでくるかもしれない。イタリアやスペインの記者に聞いた悪い噂を思い出す度に、不安は大きくなっていく。

 しかし――。よく晴れた3月の午後、練習場の一室で話したイブラヒモビッチは、想像とは全く異なる人物だった。

 彼は正直に思いを語ってくれた。

 ストライカーが持つべき心構え。ファンバステンのビデオとの出会い。FC東京の権田修一からの素朴な質問への回答。尊敬するジダンが周囲に与える影響、あるいは流行の『偽9番システム』とメッシについて――。

「その内、日本にも優れたストライカーが出てくる」

 個人的に確かめたかった、彼自身のバッドボーイというイメージ、エゴとストライカーの関連性についても、じっくりとその考えを聞くことができた。

 どうすれば日本にも『日本人選手100人が選ぶベストFW』のリストに載るような世界的なストライカーが生まれるのか。そんなことも訊いてみた。

 すると彼は心配するなと首を振り、こう話すのだった。

「たしかに日本は最前線のストライカーというよりも、2列目の選手の印象が強い。ナカタにナカムラ、カガワ。今、自分の古巣のミランにはホンダもいる。彼らみたいな10番タイプの選手が目立つから、日本にはストライカーがいないという印象が強くなるのかもしれない。事実、彼らは高い能力を持った素晴らしい選手たちだ。ただ、ストライカーに関しても心配することはないよ。こういうものは、タイミング次第なんだ。どれだけFWの育成をしても、なかなか生まれないことだってある。その内、きっと日本にも何人も優れたストライカーが出てくる時期がくるはずだ」

 真っすぐにこちらを見て話すイブラヒモビッチにそう言われると、いつかこのリスト上にいるような選手たち、イブラヒモビッチ自身やルイス・スアレス、ジエゴ・コスタみたいなFWが日本からも出てくるんじゃないかと思えるから不思議だ。

【次ページ】 モウリーニョと話したときと似た、ある感覚。

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