セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
右サイドを失い、10番対決に完敗。
本田の“忍耐の時”が終わる条件。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2014/03/03 16:30
ユベントスで10番を背負うテベスと競り合う本田圭佑。得点王争いのトップに立ちながら、守備でもハードワークを厭わない。その姿に本田は何を感じたのだろうか。
まさかイタリアで、ボランチをするとは思ってもみなかっただろう。
セリエA26節の大一番ユベントス戦に臨んだミランのスタメン表に、HONDAの文字はなかった。MF本田圭佑がフィジカルコンディション以外の理由で先発を外れるのは、ミラン加入後初めてのことだった。
本田は2点のビハインドを追う70分に、主将モントリーボに替わって途中出場した。ミランと双璧をなすイタリア屈指の名門との大一番で、10番へ与えられたポジションは、ゴールからずっと離れた3列目だった。
MFデヨングの隣で、本田は攻守のサポート役に専念した。本田が攻撃に絡んだ場面は、80分のFKと、後半ロスタイムにクロスバーを叩いたFWロビーニョのシュートの起点になった場面以外ほとんどなく、ミランは0-2で敗れた。
右サイドではターラブトの存在感が急上昇中。
黒星こそついたが、試合内容そのものはセードルフ体制発足以降最良とも呼べる出来で、3連覇を目指すユベントスを相当に苦しめた。特にリスクのあるマンマークを徹底した前半は、新編成の攻撃カルテットが少なくとも3度の決定機を作った。試合後、ユーベの闘将コンテも「今夜のセードルフとミランは本当によかった」と率直に褒め称えたほどだ。
だが、そのゲームでミランの10番が存在感を発揮したとは言い難い。ユベントス戦での攻撃のカルテットに、本田のポジションはなかった。
本田が定位置を得ていたはずの右サイドで先発したのは、同じく1月の移籍市場で加入したMFターラブトだった。
本田が胃腸炎で欠場したナポリ戦で初先発し、試合開始早々デビューゴールを叩き込んだ。モロッコ出身の悪童という前評判だったのが、試合後、日本報道陣にも丁寧かつ気さくに対応する姿を見て考えを改めた。前節サンプドリア戦でも先制ゴールを挙げ、勝利に貢献している。
いったん足元にボールを収めることが多い本田と異なり、ターラブトの球離れは早い。相手DFが動く前にアクションを起こすアジリティを活かし、完全に2列目の一角を確保した。