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<各校エースたちの最終章> 箱根駅伝 「速さだけでは、足りない」 

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中村計

中村計Kei Nakamura

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photograph byAsami Enomoto/Nanae Suzuki

posted2014/01/21 06:15

<各校エースたちの最終章> 箱根駅伝 「速さだけでは、足りない」<Number Web> photograph by Asami Enomoto/Nanae Suzuki

左から大迫傑(早大)、服部翔大(日体大)、窪田忍(駒大)、設楽啓太(東洋大)。

東洋大の圧勝劇に終わった2014年の箱根駅伝。
今大会の優勝候補には、ある共通点があった。
それは「4年生で主将、そして、チームのエース」
という、絶対的な“主役”の存在である――。
彼らの明暗を分けたものは、何だったのだろうか。

 昨夏のモスクワ世界陸上にも出場した学生最速ランナーは、おどけるように言った。

「僕が行かなかったら、けん制し合って誰も行かなかったと思う。せっかく練習してきたのに、それはちょっともったいないな、と」

 今年は“花の2区”以上に1区に注目が集まった。その最大の理由は、早大のエースで主将の大迫傑が登場するからだった。監督の渡辺康幸が起用意図を語る。

「駒澤の三冠を阻止するためには、そういうオーダーを組まざるをえなかった」

 10月の出雲駅伝、11月の全日本大学駅伝と、いずれも駒大の1区・中村匠吾がトップで襷を継ぎ優勝の流れを作った。「1区・大迫」はその必勝策を崩すための「駒大シフト」だった。他校も同じ考えだったようで、今年の1区は例年になくエース級がそろった。

 そんな中、大迫はスタートから先頭に立った。最初の3kmは区間新ペースで快調に飛ばす。しかし10km過ぎ、青学大の一色恭志がスパートをかけると、にわかにリズムが乱れる。

「1、2年生のときのいいイメージがあったので、そのイメージで行こうと思ったんですけど。今回は体がきつくなるのが早かった」

早大・渡辺監督は課題を認めながらも、大迫を擁護した。

 そして渡辺が「15kmからが彼の課題」と危惧していたように、18kmを過ぎると端正な顔が小さく歪み、徐々に遅れ始める。

「あそこからしんどくなった……」

 結果、トップの日体大から49秒遅れの5位に沈む。不発。そんな印象が残った。

 世界を見据える大迫は今年度、練習拠点をアメリカに置いた。チームが箱根モードに入る11月中旬にも渡米し、約1カ月間チームを離れた。その影響がなかったとは言えまい。だが、渡辺はこう擁護する。

「ファンの方には、学生No.1だったら日本人選手には負けないんじゃないの、って思われたでしょうね。それはしょうがない。でも、彼のこの1年の取り組みが間違っていたとは思っていない。甘やかし過ぎているという批判もあったのは事実ですけど、僕は彼の考えに賛同できましたから」

 大迫はあくまで淡々と振り返った。

「現状で出せる力は全部出せました。あれ以上出せと言われても無理だったと思います」

【次ページ】 昨年の“山の神”は左足甲の痛みを抱えて走っていた。

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