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最優秀監督と新潮流。
~MLB今季最高の指揮官に思う~ 

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芝山幹郎

芝山幹郎Mikio Shibayama

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photograph byMLB Photos via Getty Images

posted2013/11/16 08:01

最優秀監督と新潮流。~MLB今季最高の指揮官に思う~<Number Web> photograph by MLB Photos via Getty Images

2008年オールスター。ロッキーズ監督だったハードル(左)とレッドソックス監督だったフランコーナの2ショット。2007年のワールドシリーズはフランコ―ナが制した。

 大リーグの2013年最優秀監督賞が発表された。ア・リーグが、インディアンスのテリー・フランコーナ。ナ・リーグが、パイレーツのクリント・ハードル。

 妥当といえば妥当、保守派の巻き返しといえばそうとも見える選考結果だが、発表前はジョン・ファレル(レッドソックス)やドン・マッティングリー(ドジャース)の評判が高かった。彼ら4人にフレディ・ゴンザレス(ブレーヴス)とボブ・メルヴィン(アスレティックス)を加えた6人が、いかに票を奪い合うか。ここが興味の対象となっていたのだ。

 最優秀監督賞は、BBWAA(全米野球記者協会)に属する記者30名の投票で決まる。1位票=5点、2位票=3点、3位票=1点で計算し、それぞれが順位を決めて3人の名前を列記する。先に結果をまとめておこう。

 ア・リーグ:(1)フランコーナ=112ポイント、(2)ファレル=96ポイント、(3)メルヴィン=36ポイント。

 ナ・リーグ:(1)ハードル=140ポイント、(2)マッティングリー=68ポイント、(3)ゴンザレス=43ポイント。

 フランコーナとファレルの差は、1位票の多寡だ。フランコーナが16人から1位票を集めたのに対し、ファレルは12人から1位票を獲得したにとどまっている。2位票は、どちらも10人ずつ。

昨年から28勝を上積みしたファレルだったが……。

 一方のナ・リーグは、思った以上に差がついた。ハードルが1位票を25人から集めたのに対し、マッティングリーは2名から支持されたにすぎなかったのだ。3位のゴンザレスが3人から1位票を獲得したのだから、これはちょっと意外な結果だった。

 ちなみに、最優秀監督賞の投票はポストシーズンの前に締め切られる。発表は11月中旬になってからだが、要するにレギュラーシーズンでの采配ぶりが評価されるわけだ。

 今季の有力候補には、そろって強力なセールスポイントがあった。ファレルは、昨年、東地区最下位だったレッドソックスに地区優勝をもたらした。69勝93敗(2012年)を97勝65敗(2013年)にリフトアップしたのだから、実に28勝の上積みだ。

 ファレルは投手陣のやりくりも見事だった。クレイ・バックホルツやアンドルー・ベイリーといった主力がつぎつぎと故障で戦線離脱するなか、クレイグ・ブレスロウ、田澤純一、上原浩治というリリーフ陣を確立したのは大きな成果といえる。

【次ページ】 弱い球団を引き上げた手腕が賞賛された。

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