プロ野球亭日乗BACK NUMBER
代表戦を“花相撲”にしないために。
小久保ジャパンが得た3戦の大収穫。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byAP/AFLO
posted2013/11/13 10:30
台湾に3連勝で、上々のスタートを切った小久保ジャパン。4年後のWBCへ向けて、長い戦いは始まったばかりだ。
完全アウェーでのプレーを体験した意味は大きい。
しかし、今回の台湾代表には日本ハムの陽岱鋼が入り、台湾の野球ファンにとってはその“凱旋興行”という意味合いもあった。そのため小久保監督も驚いたように球場は連日、ほぼ満員の盛況。台湾独特のマイクとトランペットを使った派手な応援もあり、日本代表にとってはいい意味で、完全アウェーの環境で勝負ができた。
しかもグラウンドは、日本のように整備の行き届いたものではない。天然芝で土の部分は荒れていつイレギュラーしてもおかしくない。照明も暗く、飛球も見にくいし、バッテリー間のサインもよく見えないために、捕手は指に白いテープを張ってサイン交換をした。また、現地の台湾人審判が主審を務めるとゾーンもバラバラ……。
ある意味、これが国際大会、という経験ができた。いつも整った環境でプレーをすることが当たり前になっている選手にとっては、まったく違う環境での試合は貴重だったはずである。
「日の丸を背負って投げることに最初は非常に緊張するとともに、やりがいを感じました」
こう語るのはヤクルトのルーキー・小川泰弘投手だった。小川は第1戦に先発して4回を投げ1失点ながら、4連続を含む8つの三振を奪って力を見せつけた。
「初回は久々のマウンドで自分の投球ができなかったのが反省点。とにかく1球、1球、責任を持って投げることを心掛けた。普段と全然違う環境で試合ができたことも自分にとってはいい経験になった」
4年後を期待させた、大瀬良大地投手のカットボール。
また第2戦では広島にドラフト1位指名された九州共立大・大瀬良大地投手も登板。5回から2イニングを投げ無失点ピッチングで代表デビューを飾っている。
「大きな舞台で投げさせてもらったことがいい経験になった。せっかくの機会なので楽しもうと思って、楽しく投げられましたけど、やっぱり緊張感はハンパなかったです」
5回1死から自己最速の153kmをマーク。6回2死一、三塁のピンチを招いたが、最後はフルカウントからカットボールで空振り三振に仕留めてガッツポーズを見せた。
「フルカウントからあそこに投げられるのはさすが。4年後? あのボールを見たらそう(選出したいと)思いたくなりますね。故障なく順調に育って欲しい」
小久保監督もこう語って目を細めた。