欧州サムライ戦記BACK NUMBER
香川、今季2度目の先発出場も……。
「大人しい」ことは美徳ではない!
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byREUTERS/AFLO
posted2013/09/26 12:00
独力での突破よりもコンビネーションの中で輝く香川にとって、出場機会が限られる事態は危機的。多士済々のマンU攻撃陣との厳しいポジション争いが続きそうだ。
惨敗のダービー後、香川起用を求める声も。
マンC戦をベンチで終えた香川の名前は、試合後、テレビ解説を務めたガリー・ネビルのコメントにも、全国紙のレポートにも登場した。但し、スタメン扱いが当然というようなものではない。
ネビルは、「香川を投入する手があったかもしれない」と後半の選手交代候補として名前を挙げ、高級紙の1つ『デイリー・テレグラフ』も、「この日のアシュリー・ヤングよりはマシだったはず」という程度のものだった。それでも、開幕からベンチが続き、存在感が薄れる一方だった日本人MFにすれば、前向きな国内メディアの反応だ。
イングランドの記者たちも、香川のテクニックとセンスの良さは認めている。だが、今季の評価を尋ねれば、『テレグラフ』紙や『ガーディアン』紙の記者も、「新監督に干されているのに大人しすぎる」と手厳しい。
たしかに、今季初の先発を経験したCLでのレバークーゼン1戦(4-2)にしても、先発したマンU攻撃陣の中では最低の印象だった。ワンタッチでパスを交わす香川らしいプレーも見られたが、スコアシートに名を連ねたのは、2ゴールのルーニーに、ロビン・ファンペルシとアントニオ・バレンシア。このうち、ルーニーはトップ下争いで優位な立場にあり、右サイドのバレンシアの評価が高まり、他のウィンガーが左サイドに出場機会を求めるようになれば、香川は第2の持ち場でも競争相手が増えることになる。
モイーズは「マンUの指揮官」としての采配ができなかった。
ルーニーからポジションを奪うのは、現時点では至難の業だろう。
9月の4試合で4ゴール2アシストと好調な上、敵に圧倒されたダービーでも、FKからのゴールを含め、マンUでは1人だけ評価に値する奮闘を続けた頼もしい存在だ。また、だからこそ、そのマンC戦では、ファンペルシが負傷欠場していたこともあり、2点のビハインドで迎えた後半からは、ルーニーをトップ下から最前線に上げて形勢逆転を試みる策があったはずだ。
ところが、モイーズはハーフタイム中には動かなかった。交代を行ったのは後半開始6分。だがその間に、マンCのリードは4点に広がっていた。おまけに、投入されたのは、ベンチにいたMF陣の中では最も守備的なトム・クレバリーだった。「マンUの指揮官」ではなく、「慎重な指揮官」としてのモイーズが顔を出した交代策だ。