サッカーの尻尾BACK NUMBER
バルセロナがポゼッションを捨てた!?
保持率49%の衝撃と、新たな攻撃法。
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byREUTERS/AFLO
posted2013/09/24 11:25
グアルディオラがバイエルンの監督に就任すると同時に、バルセロナで脱グアルディオラが始まった。この数奇な巡りあわせの結末はいかに。
テレビ画面に映しだされた数字を見て、一瞬目を疑った。
何かの間違いなんじゃないかとさえ思った。それは近年のサッカー界においては、まず起こりえないことだったからだ。少なくとも筆者にとっては、今季のリーガで最大の驚きだった。
バルセロナが、ボールポゼッションで相手チームを下回ったのである。
試合は9月21日に行なわれたラージョ・バジェカーノ対バルセロナ戦だ。試合後に発表されたボールポゼッションは、バルサの49%に対し、ラージョは51%となっている。
はっきり言ってしまえば、ポゼッションにおける1%の差などあってないようなもので、内容や勝敗には何の影響も及ぼさない。試合を見ている限り、ラージョの方がバルサよりボールを保持しているという印象も受けなかった。
そもそも、ポゼッションは高ければいいというものではない。事実、バルサは4-0で大勝しているし、どう好意的に見てもラージョは健闘したとさえいえない内容だった。
しかしこの試合に限っては、4-0という結果などどうでもいい。ペドロには悪いが、彼のハットトリックも二の次だ。注目したいのは、バルサがポゼッションで相手を下回ったという事実だ。
バルサがポゼッションで相手を下回ったのは5年以上前。
バルサは2008年5月7日以降、5年以上もポゼッションで相手を凌駕し続けてきたのである。通算すると315試合になる。最後に相手を下回ったのはベルナベウでのクラシコ(4-1でレアル・マドリーの勝利)で、その時は44%だった。それぞれのベンチにはシュスターとライカールトが座っていたのだから、ずいぶんと昔のことのように感じる。
その試合の数週間後、グアルディオラが監督に就任した時から、バルサは世界の階段を駆け上がっていくのだが、その代名詞が圧倒的なポゼッションだった。
全盛期には、ポゼッションが60%に達していてもカンプノウのファンは満足しなかった。スタンダードは65%。70%を超えることも珍しくなかった。
ピーク期のバルサは、ポゼッションが高いから勝てていたわけではない。そこには今は失いつつある激しいプレッシングがあったし、カリスマ指揮官がもたらす絶妙な緊張感や、奇抜な采配などもあった。