欧州サムライ戦記BACK NUMBER
内田篤人、「ポロッと」CL初得点。
シャルケを救った“嬉しくない”ゴール。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph bypicture alliance/AFLO
posted2013/09/19 12:00
悪い流れを断ち切るゴールを生んだ内田は、チームメイトに手厚い祝福を受けた。内田がチームを救ったのだと、誰もが感じていたに違いない。
後半22分。内田が決めた不思議なゴール。
昨シーズンのCLでベスト16まで進んだシャルケなのだが、実はホームで1勝2分1敗と思うような成績が残せず苦しんでいた。昨季も、攻勢を続けながらゴールが奪えずに、カウンターから失点を食らうという悪しきパターンを繰り返していたのだ。
この試合でも嫌な予感は漂っていた。優勢の時間帯を活かせないまま、いつ相手にゴールを奪われてもおかしくはない展開だった。
そんな中で迎えた、後半22分。
右サイドでボールを持った内田は、ファーサイドに流れたトップ下のボアテンクめがけてクロスを送る。これが流れていくと、両チームの選手が触れないまま、ゴールネットに吸い込まれたのだ。
ゴールが生まれた直後、喜ぶかわりに右手を振ってみせた内田が振り返る。
「ああいうゴールがたまにポロッと出る。もっと普通のゴールがいいんですけど(笑)。ケビン(ボアテンク)がつめてくれて、半分というか、ほとんど彼のゴールのようなものですよ……。あまり嬉しくないと言ったらあれですけど、意図しているゴールではないので、もう少し、練習してきます」
狙って生まれたものではない。それでも、ゴールに吸い込まれた瞬間を目の前でみたFWシャライは両手をあげ、飛び上がって喜んだ。そして、多くの選手たちが一気に内田に向かって近寄っていった。彼らのアクションこそが、ホームチームがいかに先制点を望んでいたのかを物語っていた。
内田の先制点で、チームが一気に勢いづいた!
ホームのフェルティンス・アレナで初めてゴールを決めたことについても、CLの舞台で初めてゴールを決めたことについても特別に喜ぶ様子を見せなかった内田だが、この先制ゴールが結果的にスタジアムの雰囲気を変えることになったのでは、という質問には素直にこう答えた。
「そうですね。まぁ、うちは流れに乗ったら強い。スタジアムが、1点獲れ、1点獲れ、という後押しをしてくれるので。その中で良い流れになったらこっちのもの」
このゴールにより、スタジアムにつめかけたファンも、シャルケの選手たちも息を吹き返した。
ここから、試合序盤のペースを上回る攻撃が続いていく。