詳説日本野球研究BACK NUMBER
甲子園組、不出場組が揃って活躍。
18U選手権の準Vは野球版「倍返し」!
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byYuji Arakawa
posted2013/09/15 08:01
上背は170cmながら、丸太のような腕と鋭いスイングで真っ向勝負を挑んだ森友哉。リードでもセンスを見せ、さらに評価を高めた。
全盛期のイチローを彷彿とさせる、ある打者とは。
日常的に使用する金属バットから木製バットに持ち替えて臨んだこの大会、目をみはったのは、各打者の見せた対応力の高さだ。とくに驚いたのが1番吉田の逆方向への流し打ち。木製バットにもかかわらず捕手寄りぎりぎりまでボールを呼び込んで捉えているのだ。力のあるキューバ投手から2安打、アメリカ投手から1安打と、対戦レベルが上がってもこのスタイルが変わらない。
バットを立てたまま振り出し、ヘッドを最短距離でボールに向かって出していく――。高校生なのに全盛期のイチローのような打ち方で、イチローを彷彿とさせるヒットを量産する。日本人同士ではわからなかった“超絶技巧”が世界レベルの戦いだからこそ見事にあぶり出されていった。
渡辺がキューバ戦で放った4回のホームランも見事だった。1対0でリードする展開だったが、相手は優勝回数が歴代最高の11を記録するキューバ(2位は今回で7回優勝のアメリカで、日本はまだ優勝したことがない)。力のあるキューバの投手が投じたボールは、コースが甘いと言えば甘いが、内角胸元近くにきた142キロのストレート。外国人投手のボリューム十分の142キロに対して渡辺は脇を固め、過剰なフォローを抑えたコンパクトなスイングで捉えると、打球はレフトポール際に飛び込むツーランとなった。
170cmの体で、力勝負を挑んだ森友哉の自信。
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吉田、渡辺だけではない。森友哉はほぼ全打席フルスイングという徹底ぶりで15打点を記録した。昨年もこの大会を経験し、2次ラウンドのアメリカ戦ではホーム生還を狙うアメリカの走者から2回も猛タックルを食らって退場を余儀なくされている。
日本人選手としても小柄な170センチは、捕手としても打者としても大きなハンディキャップとなる。世界を経験したことが逆に「日本人はやっぱり技巧で対抗しなければ」「力勝負では体格で劣る日本人は世界で戦えない」という縮んだ考え方に捕らわれる危険性もあった。しかし、森友は率先してフルスイングして結果を出し、力勝負でも対抗できることを証明した。
捕手としては決勝のアメリカ戦で見せた強気のリードが目に焼きついている。安楽のところで紹介したように、基本はあくまでもストレートと変化球を交えた「緩急」である。
しかし、緩い球はスピードボールを投げるための伏線、という信念が森友のリードからは感じられた。日本チームが、「速い球は力のある外国には通用しない」とはなからあきらめ、変化球一辺倒で墓穴を掘るシーンをこれまで何度も見てきた。しかし森友は日本人投手を過小評価せず、日本人に通用するストレートは配球次第で外国人にも通じるという信念で投手をリードした。