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問題児A・キャロルが英代表デビュー!
久々の大型国産ストライカーの正体。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byREUTERS/AFLO
posted2010/11/25 10:30
11月17日、フランスとの親善試合で代表デビューを飾ったアンディ・キャロル。得点はできなかったが、空中戦での強さを見せた
1対1では無類の強さを誇るも組織的守備に屈する脆さが。
ただし、シアラーが「学ぶべきことは多いがね」と付け加えているように、キャロルはまだトップレベルでの第1歩を踏み出したばかりだ。
FWとして、力づくの個人対決では現時点でも十分な強さを見せるが、クレバーな動きが不足しているため、パフォーマンスにムラが出やすい。
たとえば、サンダーランドとのダービーでは、相手CBのタイタス・ブランブルに苦し紛れのファウルを強いて退場に追い込み、大勝(5-1)に大きく貢献した。だが、組織で守られると存在感が薄れてしまう。ホームで敗れた(1-2)ストーク戦がそのパターンだった。オフ・ザ・ボールの際に、マーカーの裏をかいたり、複数のDFを引き付けてチームメイトにスペースを生み出したりするような賢いプレーが求められる。
私生活ではトラブルメーカー。酒絡みの傷害事件で法廷にも。
ピッチ外では、プロ意識の向上が火急の課題だ。
若気の至りとはいえ、今年に入って傷害容疑で2度の裁判を経験し、年明けにも3度目の出廷が予定されている。いずれもアルコール絡みの事件だが、キャロルの“飲みっぷり”は凄まじく、飲み始めると目の前に二桁もの空のパイント(550ml強)グラスが並ぶほどだという。生活態度を改めなければ、束の間のオフ以外は常にシビアなコンディショニングが要求される今日のサッカー界で、大成することは難しいだろう。
11月17日の代表戦(フランスとの親善試合)前には、私生活の問題を理由にキャロルの招集を問題視する向きもあった。だが、ファビオ・カペッロ監督は先発起用に踏み切った。「国内に彼ほど楽しみなストライカーはいない」と言うカペッロは、ウェイン・ルーニーのパートナーとして期待しているのだ。
17日の試合は、ルーニーが故障中のため1トップを任されたが、73分間の代表デビューは合格点だったと言える。
チームとしては、僅差のスコア(1-2)とは裏腹の完敗だった。フランスにボールを支配され、ビルドアップの「ビ」の字も見られなかった。しかし、キャロル自身は、後方から苦し紛れのロングボールが蹴り出される度に、ほぼ間違いなく空中戦を制してボールキープに成功した。