オフサイド・トリップBACK NUMBER
モウリーニョの影に踊らされて……。
インテル&ベニテス監督が急失速!
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph byGetty Images
posted2010/11/29 10:30
得点ランキングトップを走るエトー。昨年の得点ランキング12位という成績を考えると……いかにベニテスの戦術変化が大きいのかが分かる
インテルの新監督、ラファエル・ベニテスの首が危ない。
シーズンの序盤戦こそ好調を保ち首位にも立ったが、徐々にチームはスローダウン。11月に入ってからはブレシア、レッチェと下位チーム相手に立て続けに引き分け、ついにはミランとのダービーでも敗れて5位に転落する。11月21日にはキエーボに1-2で敗れ、6位に後退してしまった。
特に痛かったのはミラノダービーでの敗北だ。まずこの試合に敗れたことで、約2年近く維持してきたホームでの無敗記録がストップしている。加えてミラン側が退場者を出し、インテルが一人多い状態でプレーしたにもかかわらず負けたとあって、マッシモ・モラッティ会長は試合後に怒りを爆発させた。
「チームのパフォーマンス? ゼロだ。語るべき価値もない。我々は数的に有利な状態でプレーする機会さえあったのに、まったく見るべきところがなかった。ミランのプレーにやられたようには思えない。問題は、我々が実際に(まともな)プレーが出来ていないということなんだ」
裏切り者のイブラヒモビッチから屈辱的なPKを……。
モラッティ会長が激怒したのには、別の大きな理由もある。よりによって、かつてインテルにいたイブラヒモビッチにPKを決められて負けるという屈辱を味わったからだ。
モラッティがイブラヒモビッチをいかに意識しているかは、イブラヒモビッチのセリエA復帰戦、今シーズンの開幕戦の際に出したコメントからもうかがえる。長友のいるチェゼーナと対戦したミランは、イブラヒモビッチがPKを外したこともあり0-2で敗れたが、モラッティ会長は喜色満面でコメントを残していた。
「イブラヒモビッチのPK? ある意味で、インテルのファンにとっては(胸のすく)完璧な一日になったよ。試合は面白かった。正直、興味津々でもあったね」
このような発言をしていただけに、モラッティはイブラヒモビッチに大恥をかかされたという感を強く抱いたに違いない。そして怒りの矛先は、当然、ベニテスへと向けられた。
現にインテルでは11月17日にクラブの上層部がベニテス本人と直々に面談。一応、続投という結論にはなったものの、ベニテスの立場は限りなく危うい。ファンの間では即刻解任すべしという意見が圧倒的に多いし、現地メディアでもルチアーノ・スパレッティやファビオ・カペッロの監督就任がさかんに論じられている。
ベニテスは「私はまだ自信を失っていない。(セリエAの)タイトルをとるチャンスはまだ残されている」と力説するが、下手をするとリバプールのロイ・ホジソンよりも先に首を斬られかねない。