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リスク管理よりも絶えざる変化を。
柿谷を輝かせるセレッソの哲学。
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byTakuya Sugiyama
posted2013/08/13 08:03
代表の中で大きな存在感を放ち続けているセレッソの風。柿谷曜一朗が加える変化は、チームをどう進化させるのか。
カウンターで人数をかけるのがセレッソの強み。
試合後、柿谷を取り巻く輪を離れ、キャプテンの藤本に聞いた。
――2点目を奪った直後、相手のCKからボールを奪ってカウンターを仕掛けるシーンがありました。2-0という状況にもかかわらず、かなり人数をかけて前に出たんですが、逆に、クロスを跳ね返されて決定的なピンチを招きました。ああいったシーンをなくすことがセレッソの課題じゃないかと思うのですが。
「確かにそうですね。ただ、カウンターのチャンスで人数をかけられるのがウチの強みなので、どちらかと言えば後ろからのコントロールの問題。ボランチを残すのかサイドバックを残すのか、それをしっかり伝えないといけない。勝っている状況で3点目がほしかったし、今日は相手にやられる気もそれほどしなかったので、状況に応じて後ろがコミュニケーションを取ればいいと思います」
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――若くて勢いのある選手が多いチームを、試合中にコントロールするのは簡単じゃないと思います。
「特に心がけていることはないんですが、やっぱり、とにかく後ろから声を切らさないことですね。それに反応して、最近ではタカ(扇原)を中心に前の選手たちも声を出して、『自分たちがやる』という姿勢を示してくれている。そういう時は、ウチが強い時。甲府戦のように、それがうまくいっていないと結果を出せない」
柿谷と山口は、硬直化したフル代表に変化をもたらすか。
――柿谷選手を筆頭に、若手の成長をどのように感じていますか?
「それぞれに自覚を持ってやってくれています。タカは声を出して引っ張ろうとしているし、螢はプレーで示してくれている。(柿谷)曜一朗はプレーはもちろん、声でも引っ張ってくれるようになっているし、僕らにとっても助かっている。そこは変わったなと思うところですね。たまに、僕から全体に声を出しても広がらない時があるんです。でも曜一朗は、それに気づいて声を出したり、引き締めることもあるので。自覚……そういうところは変わってきたなと思いますね」
C大阪はまだまだ荒削りなチームで、目に見える課題も少なくない。藤本に最初に聞いたカウンターのピンチ、完全なフリーでのヘディングを大宮の曺永哲が決めていたら、流れは大きく変わっていただろう。
それでも、2-0でリードしている状況で迷わず3点目を狙う姿勢が、このチームにいるタレントのポテンシャルを引き出していることは間違いない。リスク管理は最低限で十分。常にゴールを目指すチームで躍動する柿谷と山口が、“フル代表”に大きな変化を与えてくれることにも期待したい。