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<賞金女王への途上> 有村智恵 「思いきってもっと強く」 

text by

雨宮圭吾

雨宮圭吾Keigo Amemiya

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photograph byTaku Miyamoto

posted2010/11/11 07:30

<賞金女王への途上> 有村智恵 「思いきってもっと強く」<Number Web> photograph by Taku Miyamoto

有村に「練習」の意味を問われた樋口久子の答え。

 その疑問を解消するため、9月最終週の大会前日のプロアマでLPGA会長の樋口久子に「練習」の意味をたずねた。11度の女王経験をもつ樋口の答えは明確だった。

「たとえ優勝しても納得のいかない勝ち方だったら、わたしは月曜日から練習する。東京に雨が降ってて大阪が晴れていたら、あの選手は練習してるんじゃないかと思って心が落ち着かなかった」

 有村は岡本綾子にも同じように選手としてのありようを質問したことがあった。石川遼をはじめとした男子プロや宮里藍らの記事を読むことで、彼らの言葉の中にヒントを探したりもした。そして一つの結論にいたった。

「会長や岡本さんの話を聞いたり、いろんな選手の記事を見ていると、みんな同じようなことを経験してそれを乗り越えてやっているんだと分かるんです。長年すごくいい成績を残してきた選手が共通して言っているのは『あまり考えすぎないで練習して、あとは無駄な知識を排除してシンプルにできるか』ということ。やっぱり大事なのは頭で考えることではないんだなって。わたしは練習するっていう定義も分からないでいたし、疲れてきたらいくら打ってもうまくならないと考えていた。特に最近は練習量を減らしても休みながらのほうが効率がいいって思ってました」

どしゃ降りの中、一人で練習グリーンへ。

 樋口の話を聞いたその日、プロアマ戦の表彰式を終えた有村は一人でどしゃ降りの練習グリーンに向かった。誰も練習しようなどと考えない激しい雨だったが、不安を抱いていたパットの練習に1時間以上費やした。

 頭で考えるよりもまずは体を動かす。その考え方は翌週の日本女子オープンでの暗闇練習にもつながるのである。

 思い切って足を踏み入れた賞金女王への道は想像以上に複雑で、昨年の成績と比べれば、そこに現れる数字は停滞かもしれない。

「でも自分にはすごくプラスになっている感じはあるんです。去年はうまくいきすぎた部分があったので今年の方が落ち着いている。賞金女王を取りたいと思ってやってきていろんな経験ができた。すごくいい時間の過ごし方をしてると思います」

 大きな目標を掲げて、公言したからこそ理解できたものがたくさんあった。期待と責任を背負って戦う難しさ。それを身をもって味わった1年の経験は、女王への道を切り開くための有村の新しい強さになる。

有村智恵(ありむら ちえ)

1987年11月22日、熊本県生まれ。'02年全国中学選手権で優勝。東北高校ではゴルフ部のキャプテンも務めた。'06年プロデビュー。'08年プロミスレディスでツアー初優勝し、'09年は賞金ランク3位と躍進。今季は優勝1回だが賞金ランク5位と健闘(11月4日現在)。159cm

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