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<今シーズンの新潮流> 女子ゴルフ、成熟の証明。~北田瑠衣、飯島茜、藤田幸希の飛躍~ 

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小川勝

小川勝Masaru Ogawa

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photograph byKYODO/Shiro Miyake

posted2010/11/11 07:30

<今シーズンの新潮流> 女子ゴルフ、成熟の証明。~北田瑠衣、飯島茜、藤田幸希の飛躍~<Number Web> photograph by KYODO/Shiro Miyake
賞金ランキングに見えた“異変”。中堅3人の復活は何を意味するのか。

 '10年の女子プロゴルフ、賞金女王争いは、事実上決着している。11月1日時点、1位のアン・ソンジュ(韓国)が1億2522万3600円で、2位の横峯さくらを約3205万円もリード。残り4戦だから、逆転の可能性は数字上残っているというだけだ。

 しかし、今年の女子ゴルフ界に注目すべき動きがなかったかと言えば、そんなことはない。日本女子オープン優勝の宮里美香、IDC大塚家具レディス優勝の森田理香子と、平成生まれの20歳の2人が初優勝を遂げたことはもちろんだが、それだけではない。

 '03年に現役女子高生の宮里藍がツアー優勝して以降、日本の女子ゴルフ界には、毎年のように新しいヒロインが誕生してきた。今年で言えばそれは宮里美香と森田理香子だが、'10年の注目すべき特色は、新しいヒロインより、むしろ中堅選手の飛躍にあったと言える。その選手とは、北田瑠衣、飯島茜、藤田幸希の3人だ。

 この3人には、いくつか共通点がある。若くして初優勝(北田22歳、飯島22歳、藤田20歳)を飾ったが、しかしその後伸び悩んで、'09年はついに1勝もできなかった。3人とも、後続の諸見里しのぶ、上田桃子、有村智恵といった若手に、舞台の中央を明け渡した印象だった。

韓国勢の攻勢の中、日本ゴルフ界の砦を守る3人の活躍。

 その3人が今年、そろって2年ぶりの優勝を果たしたのである。賞金ランキングでもそろってトップ10入り。賞金額自体も、藤田はすでに自己最高、飯島はあと約167万円、北田も約447万円で自己最高に届くから、まだ4試合残していることを考えると、3人とも今年、自己最高を記録する可能性は十分だ。実現すれば飯島は3年ぶり、北田は6年ぶりの最高額更新となる。

北田、飯島、藤田の最近5年獲得賞金額、ランキング順位
年度    北田瑠衣(28歳)     飯島茜(27歳)     藤田幸希(24歳) 
 '10     5455万   9位     5859万   8位     6117万   6位 
 '09     4300万   19位     4263万   20位     2638万   34位 
 '08     3634万   28位     5140万   19位     3172万   29位 
 '07     2639万   33位     6026万   10位     3235万   26位 
 '06     2750万   27位     5429万   11位     3124万   24位 
※ 賞金は1万円未満四捨五入。'10年の金額は11月1日時点。

 北田28歳、飯島27歳、藤田は11月22日で25歳になる。まだ十分に若いが、現在の女子ゴルフ界では、すでに中堅に属する。今年は北田1勝、飯島2勝、藤田1勝。韓国勢の攻勢で、30試合を終えて日本人選手が16勝しかしていない中、この中堅3人の活躍は、日本ゴルフ界の砦を守ることにもなった。特にメジャー大会の一つ、日本女子プロ選手権で、ニッキー・キャンベル(豪州)が9アンダー、アン・ソンジュが7アンダーとスコアを伸ばしたとき、藤田がぶっちぎりの13アンダーで優勝したことは、日本勢のレベルを示す形となって、大きな意味があった。

【次ページ】 3人の存在が証明する日本女子ゴルフ界の豊かさ。

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